[結んで開いて 第2部][ここで暮らす](6) 軽トラ助け合い 直売所に「出ス」喜び 鹿児島県日置市

共同出荷する野菜を持ち寄り、談笑する農家ら(鹿児島県日置市で)

 “生きがい”を軽トラックが集落から店へと運ぶ。積み荷は住民が育てた農産物。自分で運転するのが難しくなった農家に代わって直売所への出荷を手掛け、暮らしに必要なものを買ってくる役割も担う。運転するのは、鹿児島県日置市高山地区のNPO法人、がんばろう高山。住民全員が参加する組織だ。住民同士の助け合いで、高齢化に伴う農業の衰退や買い物弱者の増加に悩んでいた地区が元気を取り戻した。

 「これも直売所に出したいんやけど。さっき取ったの」「いけるいける。青物が少ないから」

 毎週水・土曜日の朝。軽トラが地区の農家の自宅などを回り、収穫したばかりの農産物を集める。自分で出荷するのが難しくなった園田淑子さん(81)が「お小遣いになって、うれしい」と、照れる。

 「出ス」。門に掲げられた出荷の意思を示す看板に、軽トラがまた止まる。「足の悪い自分は、特に助かっている」。体調を気遣う運転手に、家主の立和名静雄さん(86)が笑う。

 地区は市街地から10キロほど離れた標高300メートルの中山間地域にある。住民約200人の3分の2は65歳以上。約100世帯の半数が高齢独居世帯だ。近くに店舗はない。高齢化で、農産物出荷や買い物が難しくなった。「作ったってどうせ腐らせてしまうから」。農家は外に出ることが減り、元気を失った。農地の保全も危ぶまれ、集落の存続まで心配されていた。

 同法人は、こうした課題を解決しようと、2013年に設立。「みんなで助け合えば地域はきっと良くなる」。代表を務める立和名徳文さん(69)は、全員参加にこだわった。住民に困っていることを聞き、高齢化で外出が難しくなっていることなど、危機感を共有。人が多い場所では発言できないという人に配慮し、少人数のグループでも話し合いを重ね、一致団結した。

 設立後、特に力を入れたのが、15年度に始めた農産物の共同出荷だ。自分で出荷できなくなっていた農家を支えるための仕組み。地区の約25戸から集荷し、10キロ以上離れた漁協が運営する直売所、江口蓬莱館に運び込む。集荷で高齢者の見守り活動を兼ねる。帰り道を利用し、注文に応じて住民に同館の商品を届ける。農業を支えるだけでなく、見守りが必要な人や買い物が不便な人にも利益がある。

 集落は変わった。農産物が売れることが励みになり、家にこもりがちだった人が畑に向かうようになった。「きれいなナスやなぁ」「こんなの作れないよね」。地区の公民館などに野菜を持ち寄り、軽トラを待つ農家の間に会話が生まれた。住民同士の交流がそれまで以上に深まった。

 「みんな喜んでくれる。やめられないよ」。軽トラの運転を担う、桑木野勝夫さん(67)が汗を拭う。農家は生きがいを取り戻したと実感する。

 農産物の出荷は、江口蓬莱館にとっても渡りに船の提案だった。近隣の農家の高齢化に伴い、品薄に悩んでいたからだ。同館の支配人の柿本久人さん(52)は「高山地区の野菜が並ぶ水・土曜を選んで来店する人もいるほどだ」と喜ぶ。同法人には、市内に来年、新設する予定の病院からも出荷の依頼が舞い込む。つながりは広がりを見せている。

 共同出荷する農産物の売上高は初年度の57万円から、17年度は300万円になった。より多くの住民の所得増につなげようと、9月から地域の女性が作る郷土料理「けせん団子」も売り始めた。

 「協力してよかった」「地域全体が活気づいてきた」。住民たちは口をそろえる。


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