[達人列伝 68] ソバ 北海道音威子府村・三好和巳さん(65) 2回の乾燥 風味高く “水はけ命”投資惜しまず

収穫したソバの実を手に持つ三好さん(北海道音威子府村で)

 北海道音威子府村の三好和巳さん(65)は地域の特産、ソバの道を切り開いた立役者だ。品質を妥協しない姿勢を貫き、農地の水はけ、土づくりなどの営農技術を徹底し、収穫後の乾燥にも細心の注意を払う。こだわりの品質は契約する製粉会社の折り紙付き。視察に訪れる生産者にはノウハウを惜しみなく伝え、産地全体の活性化にも取り組む。

 三好さんは23歳のころ、父親を交通事故で亡くした。農地27ヘクタールと共に継承したのが、1700万円の借金だった。1988年、少しでも収入を増やそうと、小豆やジャガイモ、小麦、テンサイなどの栽培が盛んな同村に、地域に先駆け、ソバを持ち込んだ。「マイナスからのスタートだった」と話す。

 栽培は実践の中で学んだ。試行錯誤しながら、徐々に経営規模を拡大した。最も苦しかったのが、96年の降ひょう害。わずか20分間で、それまで手塩にかけて育ててきたソバが押しつぶされて全滅した。「あぜんとして言葉がなかった」と振り返る。しかし、後戻りはできない。「やるしかない」という強い思いで、営農を再開。学びながら安定した収量を確保できるようになった。

 ソバは倒れやすく栽培が難しいとされるが、「倒れる理由の多くは人災。基本技術を忠実に守り、妥協しなければしっかりと育つ」と強調する。

 特に注意するのが、水はけの良い農地づくり。湿害を防ぐため、数十年かけて暗きょを整備している。投資を惜しまない。昨年は4000万円、今年も1000万円を投じる。土づくりは有機質の肥料を使うことを徹底する。

 収穫したソバの乾燥にも注意を払う。資金が足りない中、中古の機械を集め自前の乾燥工場を建設した。乾燥は2回に分けて行い、まずは風乾燥し水分を20%以下まで下げる。さらにもう一度、火を使う乾燥機で仕上げる。2回も乾燥するのは珍しいが、一度に温度を上げ乾燥させるよりも、粘りと風味が増すという。製粉会社などと契約し、全国のそば店などで使われる。自然な甘味や香りが特徴だ。

 現在は同村に約10戸のソバ農家がいる。三好さんは道内や全国から訪ねてくる生産者に、栽培ノウハウを伝える。「地域だけでなく道内各地の生産者に技術を伝え、北海道のソバのブランド力を高めたい」と強調。今後は農地を次世代につなぐことを視野に入れる。(望月悠希)
 

経営メモ


 ソバ180ヘクタールを含め、ナタネやエゴマ、カメリナ、アマ、小豆を約390ヘクタールで栽培。「自立心」を持つことをモットーに、経営の改善を続けている。
 

私のこだわり


 「土づくりや乾燥でも手間やコストを惜しまず妥協しないことで、収量や品質が安定する」 

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