地方活性化で日本再生 分散型への転換促せ 新潟食料農業大学教授 武本俊彦

武本俊彦氏

 自民党総裁選は予想通り安倍晋三首相の3選で幕を閉じたが、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の恩恵にあずかれなかった地方の党員党友の良識が石破茂氏の善戦をもたらした。唯一の救いかもしれない。

 自民党政権の政策は、国が主導して大量生産・大量消費を前提とする鉄鋼・家電・自動車などの輸出産業を実現させ、一時は世界第2位の経済大国に上り詰め、国民生活を豊かにすることに成功した。
 

雇用破壊を加速


 集中メインフレーム型システムは、人口増加・物価上昇で労賃コストの安い時代には国際競争力を発揮するが、円高になると電化製品のように海外立地を進め、国内では企業収益をひたすら内部留保としてため込み、技術者のリストラ、非正規雇用へと転換し、雇用破壊の進む若者を中心に結婚を困難にさせた。

 こうした実態変化を無視して行われているアベノミクスは、円安で旧来型の輸出産業の利益を確保する方策なので産業構造の転換を遅らせ、地域経済を疲弊させるばかりだ。
 

三つの視点鍵に


 だから、地域の活性化による日本再生には次の三つの方向転換が必要なのだ。

 第一は、分散ネットワーク型システムへの転換である。スーパーコンピューターと情報通信技術(ICT)の発達によって分散している個々の生産者が、ネットワークに結び付けられると多様な消費者・実需者のニーズの変化を瞬時に把握することで、適時・適質・適量の供給が可能となる。また、今回の北海道地震のような相次ぐ地震、地球温暖化の影響による災害の激甚化には、分散ネットワーク型システムは不可欠の前提条件だ。

 第二は、マーケットイン型経営への転換である。米需要は、人口減少と高齢化により今後ますます減少傾向を強める。しかし、外食や中食の米需要は増加する一方で、家庭で炊飯される米が減少しているのだ。日本周辺の香港やシンガポール、台湾、韓国、マレーシア、中国、タイなどでは分厚い中間層が誕生しつつあり、日本にとって潜在的な需要拡大の可能性も見込まれる。こうした多様な用途に応じた生産には、リスクを見極め、価格など売れる条件を確認して生産するマーケットイン型経営を導入する必要がある。

 第三は、内発型発展モデルへの転換である。現在の地域開発方式は、過疎地に大規模な発電施設を建設し立地市町村に補助金をばらまく、いわゆる外来型開発といわれるものである。この方式は雇用と所得の存続が地域外の判断に左右される不安定性がある。利益の地域への還元が担保されつつ地域の発展を図る内発型発展とは、地域で生まれた利益の一部を地域に還元することを条件に地域外の主体を誘致することである。

 以上の転換を促進するためにも、中途半端に終わっている地方分権改革を税財源の配分を含め徹底的に進めなければならない。 

〈プロフィル〉 たけもと・としひこ

 1952年生まれ。東京大学法学部卒、76年に農水省入省。ウルグアイラウンド農業交渉やBSE問題などに関わった。農林水産政策研究所長などを歴任し、食と農の政策アナリストとして活動。2018年4月から現職。 

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