TPP11年内発効 自由化ドミノを許すな

 日本農業を過去最大の市場開放が襲う。米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)が12月30日に発効する。協定自体、大きな問題を抱えるが、年明けには日米物品貿易協定(TAG)交渉も控え、TPPを離脱した米国の開放圧力が強まるのは必至だ。生産基盤が弱体化する国内農業は自由化ドミノで存亡の岐路に立つ。

 TPPが曲折を経て、発効することになった。農林水産物の82%で関税が段階的に撤廃される。米や牛肉などの重要品目でも関税削減や輸入枠が設定されており、国内農業への甚大な影響は来年から避けられない。

 年内発効によって関税率などは1年目の合意水準が適用され、来年4月から2年目の水準となる。牛肉の関税は現行の38・5%から1年目に27・5%と10ポイント近く下がる。豚肉の高価格帯の従価税も4・3%から2・2%になる。オーストラリア向けに最大8400トンの米の特別輸入枠を設定したが、当初は6000トンとなる。

 TPPは「自由貿易の優等生」とされ、域内の関税撤廃・削減に加え、投資やサービスなど幅広い分野のルールを定める。米国が抜けたとはいえ、参加国の国内総生産(GDP)は世界全体の13%を占める。巨大自由貿易圏の誕生であり、さらに参加国の拡大を目指す。

 問題はそこにとどまらない。一部品目でTPPを上回る譲歩をした欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も来年2月発効の見通しだ。こちらもTPP11同様、農林水産物の82%で関税を撤廃する。

 これらの協定発効により競争条件で劣後する米国が日本との二国間交渉で、TPPやEPA以上の譲歩を迫るのは目に見えている。TPP発効で総自由化時代の「パンドラの箱」が開いた。しかも農畜産物が標的だ。米国が「TPP以上」を迫った時に日本は拒否できるのか。茂木敏充TPP担当相は、譲歩の可能性を否定しておらず、国会の場で日本の通商方針を明確に示すべきだ。しかもこれらを全てを包括する国内対策など財政上も現実的ではない。影響試算のやり直しも含め、徹底した国会審議を求めたい。

 TPP11の早期発効を主導した日本政府の姿勢も問いたい。政府は米国復帰を前提に、当初12カ国で合意した農産物市場開放水準を容認。米国の復帰が見込めなくなれば、乳製品の低関税輸入枠や牛肉・豚肉などのセーフガード(緊急輸入制限措置)を見直すとしていた。米国に復帰の意思がなく、日米通商交渉に入る以上、早期にTPPの合意内容を見直すのが筋だ。

 政府は、保護主義に対抗する自由経済圏を目指すと勇ましいが、農林水産業を犠牲にして成り立つ国づくりとは何なのか。「農業の成長産業化」との掛け声と裏腹に、生産基盤の弱体化が進み、食料自給率の低下傾向に歯止めがかからない中で、禍根を残すTPP11発効である。

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