利用困難農地 管理どうする 省力作物で再生? いっそ山に返す? 負担重過ぎ対応に苦慮 

1975(昭和50)年ごろの姥久保地区の棚田の風景(国土交通省提供=上)と現在の棚田。木が生い茂り耕作されている様子は見られない(長野市で)

 高齢化や担い手不足で管理が難しくなり、農山村で耕作放棄地が増加する中で、利活用が難しい土地をどうするのか、現場の農家が模索している。管理の在り方や管理の負担が重過ぎる土地への支援策を検討する国土交通省には、農林地が負の遺産になっている現実に即した対策を求める声が上がる。専門家は住民同士で土地管理を話し合い、計画作りを進める必要性を指摘する。

 10月半ば、長野市。国交省で土地活用の議論を進める大学教授ら委員や官僚、農家ら約20人が棚田などを視察した。

 訪れたのは長野県旧中条村(現長野市中条地区)。日本の棚田百選に登録される棚田が三つある。その一つ、大西地区の棚田は、NPO法人中条地区住民自治協議会の大日方孝二事務局長によると、「近い将来、完全に放棄される可能性が高い」。稲の収穫を終え、はざ掛けの風景が見られるが、高齢農家によって何とか維持されている状況だ。

 続いて訪れた旧中条村姥久保地区の棚田。最盛期は30~50世帯が棚田を利用し、美しい風景を見せていた。現在は耕作する人はほぼおらず、放置されて大部分が林になった。棚田内部は草や木が生い茂り、近隣住民は鳥獣害の発生を懸念する。

 中条地区の人口は1950年の7000人超をピークに、2018年1月時点で1848人と減少を続けている。半数以上は65歳以上で、高齢化率は52%と長野市の平均29%を大幅に上回る。大日方事務局長は「傾斜地が多く、機械化が難しい。担い手もいなくなり、耕作していくのも厳しい。諦めるにしても鳥獣害対策をどうしたらいいのか」と頭を抱える。

 現地視察後に同市で開かれた同省の審議会では、こうした厳しい現実を直視した委員らが農地を自然に返す可能性にも議論が及んだ。

 一方で、現場では話し合いを重ね、ビジョンを共有するなどして耕作放棄地を再利用する動きも始まった。長野市内の耕作放棄地は1425ヘクタールで、耕作放棄地率は22・9%に上る。同市七二会地区では、信州大学と市が共同でイネ科の穀物、ソルガム栽培の実証試験を行う。子実で食品を開発・販売し、茎葉はきのこの培地やバイオマス(生物由来資源)燃料に利用する。10アール当たりの年間作業量は夫妻2人で6日間と見積もる。

 中条地区の住民も今後、議論の場を設け、土地管理の計画作りを進める方針だ。同地区の農家、久保田清隆さん(56)は「荒れていくのは仕方ないと思っていた。農地を生かせるよう何らかの方策を考えたい」と強調する。

 同省は、土地を使っていける仕組み作りを行うとともに、個人で管理するには負担が重過ぎる土地への支援策を審議会などで検討する。防災や鳥獣害、環境などに配慮し、管理方策の目安を示し、農地や森林、宅地なども含めて土地をどう使っていくか地域で管理ビジョンを作ることを想定する。検討を踏まえて2019年中に新たな施策へ提言を行う。
 

住民挙げ協議を


 岩手大学農学部の広田純一教授の話 管理が難しい土地に対し、地域で多様な主体で協議する場が必要だ。なし崩しに放棄が進み、計画的な対応が不足していた。土地の利用を模索する主体を探して、参加できるようにする仕組みを作ることが重要だ。
 

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