入管法案閣議決定 丁寧な国会審議不可欠

 政府は、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法(入管法)改正案を閣議決定した。労働力不足に悩む農業も対象となる見通しだが、移民受け入れにもつながりかねない大転換となる。政府は来年4月のスタートを目指しているが不明な点が多く、丁寧な審議を求めたい。

 極めて曖昧と言わざるを得ない。法務省が示した入管法改正案は具体性に欠けた内容が列挙されている。在留資格として新設する特定技能1号、2号もどんな業種が対象になるのか明確になっていない。

 1号は「産業上の分野に属する相当程度の知識または経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」としているが、どんな職種が対象かは明記されていない。政府内で農業の他、介護や漁業、外食業など14業種を検討しているとされるが、肝心の法務省は「具体的に決まっていない」(入管局)としている。こんな不明確なままで議論はできるのか。

 さらに2号は「熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」とし、配偶者や子どもにも在留資格を与え、在留期間は更新できるとした。実質、移民につながる恐れがある。「熟練した技能」に農業は入らない見通しだが、どんな業種を指すのか不透明だ。

 外国人を受け入れた際の報酬額については「日本人と同等以上であることなどを確保する」とした。今後、分野をまたいだ基本方針、分野ごとの運用方針などを定めるというが、治安面を含めて国民の不安に政府はどう応えるのか。

 農業分野では、労働条件や環境整備など課題は山積している。例えば技能実習を終えた外国人が、特定技能1号の資格を得て農業に従事する労働者になった場合だ。技能実習生は「他産業並みの労働環境を目指す必要がある」(農水省)として労働時間や休憩、残業代の割増賃金などについて労働基準法に沿った条件となっている。ところが、労働者となった途端、これらの条件が適用除外となり労働条件に差ができる。より良い条件を求めて失踪した外国人実習生は2017年は7089人と、12年の3・5倍に上る。人材を確保するためには他産業並みの労働条件が求められる。

 安全な環境整備も待ったなしだ。実習生に対し、農作業安全講習を開いているJAもあるが、外国人の事故は増え続けている。国際研修協力機構によると、農業では2016年度に100人以上が事故に遭った。4日以上の休業は52人、4日未満は56人と多発。過去には死亡事故も発生しており、国際問題にも発展しかねない。労災保険の加入も急務だ。外国人を単なる労働力としてではなく、一人の人間として尊重する人権教育も欠かせない。

 具体的な改正案の仕組みが見えない中で、国会での拙速な審議は許されない。 
 

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