臨時国会への注文 政治に緊張感取り戻せ

 安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党の代表質問を皮切りに国会論戦が始まった。農業者らの間で、相次ぐ農政改革や押し寄せる貿易自由化の荒波に懸念の声が高まっている。政府・与党は今国会にどう臨み、野党はどう対峙(たいじ)していくのか。国会審議を充実させ、政治に緊張感を取り戻すことが必要だ。

 臨時国会は、安倍首相にとって最後の任期3年の行方を占う重要な場となる。野党側にとっても、来年夏の参議院選挙の1人区で候補者の一本化ができるかなど、今後の政治決戦への試金石となる。安倍首相が所信表明演説で、「長さゆえの慢心はないか。そうした国民の懸念にもしっかりと向き合っていく」と語ったのは、農村部を中心に「安倍一強」への不満が広がっていることへの危機感の表れだろう。

 だが、論戦は冒頭からかみ合っていない。10月30日の衆院代表質問では、無所属の会の野田佳彦前首相と安倍首相が因縁の対決に臨み、野田前首相が環太平洋連携協定(TPP)や米国との貿易交渉を巡り、「(米国を)TPPに引き込むと豪語してきた安倍首相は、2国間自由貿易協定(FTA)交渉をすることに合意した」とかみ付いた。日米物品貿易協定(TAG)を「FTAとは異なる」と主張する安倍首相を挑発する場面もあった。これに対し、安倍首相は「日本はかつてTPPの交渉開始すら長く決断できずにいた時期もあった」と、民主党政権時代の政権運営の混迷ぶりを皮肉る形で応戦した。双方の批判合戦をいつまで続けるつもりなのか。農業者らが期待する真摯(しんし)な論戦とは程遠い。

 米国を除く11カ国の環太平洋連携協定(TPP11)は12月30日に発効し、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の国会承認の審議が控える。来年1月には米国とのTAG交渉が始まる。

 野菜や果樹、酪農などで生産基盤の弱体化が顕在化する中、かつてない農産物の市場開放が生産現場に与える打撃は大きい。日本の食料安全保障をどうするのか。低迷する自給率をどう高めるのか。国家百年の計を示すべきだ。

 農政では、農地中間管理機構(農地集積バンク)見直しや、米の生産調整見直し初年度の状況を踏まえた米政策が焦点となる。農地集積バンクによる担い手への農地集積が伸び悩む原因は何なのか。今の手法に永続性はあるのか。米の需要減に歯止めをかけられないのか。徹底した検証が必要だ。

 農村は大規模農家だけでは守れない。中小規模を含めた家族経営を軌道に乗せる施策も求められる。政府与党は、数を背景にした強引な国会運営を続けるようであれば、農業者の理解は得られない。野党は批判だけでなく具体的な対立軸を示し、骨太の議論をすべきである。

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