[島根・JAしまね移動編集局] 中山間農業 第三者継承で未来へ

岡崎さん(左)から枝の剪定(せんてい)の仕方を教わる藤井さん(島根県益田市で)

 人材難に悩む島根県の中山間地で、農業経営を集落や家族・親族の枠を超えて承継する動きが出てきた。JAしまねも承継を加速させるため、2017年度から地域農業の担い手に出向くJA担当者(愛称TAC=タック)を中心に支援を開始。個別経営体や集落営農が培ってきた経営基盤を、第三者に委ねることで、地域農業の未来をつなぐ。(橋本陽平)
 

資産と技術 守る


 県西部の益田市では10月、1・5ヘクタールのブドウ園で第三者継承が実現した。岡崎弘幸さん(78)は40年、夫婦でブドウ栽培を続け、現在は1・1ヘクタールで栽培していたが、「息子は会社勤めで、毎日仕事があるブドウ栽培はできない」ため、後継者を探していた。

 岡崎さんの思いを継いだのが、31ヘクタールで主食用米を生産する合同会社アグリ米(べい)ブリッジ。経営強化へ複合経営を模索していた同社代表の藤井強志さん(58)は、「来年から収穫できる木もあり、技術も学べる。ゼロからの出発と比べ、恵まれている」と話し、前経営者が元気なうちに資産や技術を継承できる利点を強調する。

 県中央部の邑南町でも17年、農事組合法人赤馬の里が経営規模を大幅に縮小し、他の組織に耕作を委ねた。07年に17戸が10ヘクタールで設立した同法人で人材難が顕在化したのは、5年前。初代組合長が急死、後任や同世代の組合員も相次いで体調を崩し、経営を担う人材だけでなく草刈りの人手すら困るようになった。

 窮地を救ったのが、同町で稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ=WCS)を収穫する合同会社アグリサポートおーなんだった。60ヘクタール以上の収穫や飼料販売を手掛ける同社も、人材不足に悩んでいた。業務執行役員の坂本敬三さん(62)は「秋の短期雇用は人が集まらなくなってきた」と話す。人材集めには周年雇用が求められ、人件費分の収入を確保する新たな仕事を模索していた。

 両者の課題を補完する方法を考え、同法人の農地10ヘクタールのうち8ヘクタールをアグリサポートが引き受けた。同法人は農地をまとめて集積しており、効率的に耕作できる利点も、承継の決め手になった。同法人は解散はせず、元気な組合員が水管理や草刈りを手伝う。
 

JA 仲介に注力対話深めて


 親族や集落の垣根を越えて農業を守る動きを、JAも支援する。経営の実態把握やライフプラン設計など、事業承継の仲介に力を入れるJA。集落営農法人でも次代を担う若手が経営に参画する機会づくりを、後押しする。営農対策部の神門直樹部長は「不慮の事態などが起きてからでは、承継は難しい。時間をかけて両者が納得できる話し合いを重ねることが大事だ」と説く。

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