[島根・JAしまね移動編集局] 地元企業が参入 和牛繁殖復活へ JA、行政手厚く支援 増頭着々と雇用創出も 島根・隠岐諸島

隠岐は牛を育てるのに適している」と話す松尾常務。同社は94ヘクタールの公共牧場で放牧する(島根県隠岐の島町で)

旧飛行場を改修した隠岐の島町の市場(6日、島根県隠岐の島町で)

 島根県の隠岐諸島で、JAしまねと建設業者がタッグを組み、島の基幹産業である畜産業を盛り上げている。生産者の高齢化などで和牛の頭数は減少し、市場の開催すら危ぶまれた。県や町村とも協力し、異業種参入を支え、頭数は10年で900頭増え、子牛市場の上場頭数もV字回復。6日から始まった子牛市場では過去最多の500頭超が上場される。新たな雇用も生み出し、島に来る若者の受け皿になるなど、畜産が島を支える存在になっている。(柳沼志帆)

 「港湾事業が減る中で、島の中で伸ばせる産業を考えた結果が、繁殖経営だった」と、だんだん牧場の常務・松尾伸之さん(57)は話す。同牧場の親会社は、隠岐の島町の建設業者。目減りする港湾事業に代わる道を模索し、2011年に牧場を立ち上げた。

 隠岐諸島は島根半島の北方、40~80キロの日本海に浮かび、四つの島と、約180の無人の小島からなる。高速船でも、最速で1時間かかる離島だ。

 農産物は運搬コストがかかるため、農業では古くから和牛生産が盛んだった。省力化のために放牧も取り入れられ、国が公共牧場を整備し、放牧場は約4500ヘクタールにも上る。放牧は島の景観として、観光資源の一つになっている。

 ただ、高齢化で頭数が減少。隠岐の島町の市場では1回の上場頭数が、およそ50頭まで減った。頭数が減ると購買者も集まらない。市場開催すら危ぶまれたが、新たな事業として畜産に着目したのが、建設業などを手掛けてきた島の企業だ。

 会社の命運を懸けて参入した、だんだん牧場。ただ、右も左も分からなかった。JAや町、県などに相談し、補助や融資を受けて牛舎を建て、基盤を整えた。月1回、行政とJAを交えた会合も開き、飼養状況などを共有し、技術を磨いた。周りの支援もあり、今では繁殖雌牛220頭、育成牛30頭を飼養する諸島最大の経営規模となった。

 畜産の復活を懸け、JAも支援を惜しまない。16年度に繁殖雌牛の導入費用を最大25万円補助する事業を始めた。繁殖用牛舎などの建築・増築・改修費用も最大200万円を補助し、生産拡大を支えた。だんだん牧場の松尾常務は「JAの支えがあったから、ここまで増頭できた」と感謝する。

 同牧場は、新たな雇用も生み出した。飼養管理者として20~40代の若手5人を雇用。昨年就職した上田政和さん(22)は、農家出身ではないが和牛繁殖と放牧に関心を持ち、同町にIターン。「放牧は、牛を管理しやすく足腰も強くなるのが魅力。場長に近づくことが今の目標で、年の近い人と切磋琢磨(せっさたくま)できる環境はやりがいがある」と意欲的だ。

 県によると、隠岐諸島では04年以降、建設業を中心に9社が異業種参入した。牛の頭数も08年の約2500頭から18年には約3400頭まで増えた。
 

11月家畜市場に135頭 子牛上場は過去最多 隠岐の島町


 JAしまねは6日、島根県隠岐の島町で、11月の家畜市場を開いた。同町では過去最多となる135頭の子牛が上場された。せりには、長野県から新規の参加もあり、茨城県から福岡県まで28社・個人が参加。平均取引価格は60万1696円だった。上場が50頭未満だった2000年ごろに比べて約20万円高い。相場の変動などもあるが、頭数が増えたことで、購買者が多く集まり、再び活況を見せている。

 年3回開く家畜市場。11月は、8日までに諸島4市場で計500頭超の子牛が上場される予定で、諸島全体でも過去最多となる見込み。JAは、購買者用に船をチャーターし、4市場を回る。また、増頭に合わせて隠岐の島町では7月に旧飛行場を改修し、家畜市場としてリニューアルした。また西ノ島町は新築した。

 徳島県の代理購買として、松江市からせりに参加した朝倉弘太郎さん(73)は「隠岐の牛は放牧で足腰が強く、腹づくりもできている。生産者が熱心で頭数が増えており、購買者も増えてきた」と話す。

 JA隠岐地区本部の佐々木賢治本部長は「行政や生産者、住民一体で地域を振興していけるよう、JAが旗振り役を果たしたい」と意気込む。 
 

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