全農営業開発1年 販売版TACで打開を

 JA全農の戦略部門、営業開発部が本格稼働して1年。価値創造と顧客獲得へ成果が表れ始めた。農産物の市場環境が急変している中で、実需接近に挑戦する「販売版TAC」の役割を担う。国産の農産物を売り込む新たな試みは、国内農業の未来を展望する道とも重なる。

 営業開発部の陣頭指揮を執る戸井和久チーフ・オフィサー(CO)は、日本農業新聞のインタビューで「安売り競争に巻き込まれては駄目だ。価値に見合う適正価格を確保しなければ商品供給は長続きしない」と述べた。大手量販店の経営者トップを経験した目には、全農の強みと弱みが明確に映る。

 強みは全国を網羅したJAグループの組織力と産地を持つこと。良質な農畜産物を生む産地力こそが、他の業者にはない大きな特色だ。「産地はやり方によって、宝の山に変わる」とみる。一方で卸、市場の先が見えない弱さを抱える。その先の末端消費の現場、小売りの最前線に刺さり、需要の変化を迅速に読み取り、供給側の産地が応じる重要性を説く。

 産地振興には現在、地域農業の担い手に出向くJA担当者(愛称TAC=タック)が活躍している。営業開発部は、いわばその営業強化を担う“販売版TAC”を目指す。TACの英3文字に込められた「とことん・会って・コミュニケーション」は、販売最前線にこそ欠かせない心構えだ。営業開発部は、産地から販売までを一気通貫する“接着剤”の役割を果たす。少子高齢化の中で、食品市場の需要傾向は大きく変わっている。大量供給・大量消費の時代から少量多品目への移行だ。販売力強化は、以前から全農の「1丁目1番地」だった。だが今、営業開発部が進めるのは、これまでとは全く違う次元の試みといっていい。

 米、園芸、畜産といった縦割りを排除し、立体的な座標軸に新たな営業展開の絵を描いていく。全農の直販関連6社や一部県本部の職員も加わった構成で、品目横断的なさまざまな商品のアイデアが生まれている。営業提案から得た他業者の情報が、その後の展開の糧となり事業化し、実を結ぶ。あえて数字目標を課さず、縦横に事業活動をする。「失敗を恐れず挑戦し続ける」をモットーに掲げ、案件ごとにチームをつくり、終了すれば解散し、次のテーマで新たな営業に挑む。

 この1年で、営業開発の基盤はでき、新たな段階に向かう。県本部と連携し、単位JAも含めJAグループ全体への取り組みへと広げていく。営業開発の鍵になるのが商品の開発力だ。全農営農・技術センターとも連携しながら、魅力ある商品を提供できれば、消費の落ち込みが深刻な米をはじめ、国産農畜産物の需要はまだ伸びるとみる。有力メーカーとの製造協力も含め、商品価値を高めるバリューチェーンの構築を強固にしなければならない。 
 

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