[あんぐる] 錦秋 ナガイモ畑(青森県東北町)

収穫時期を迎えたナガイモ畑。一面を染める紅葉は、波打つ海面のようだ(青森県東北町で)

 11月に入り霜が降り始めた青森県東北町で、全国有数の生産量を誇るナガイモの畑が独特の景観をつくり出している。鮮やかな黄色や赤色に“紅葉”した葉やつるが一面に広がる光景は、農家に地中で育つ芋の収穫適期を知らせる合図でもある。

 つる性の多年草であるナガイモは、よく日光が当たるように、高さ1メートル80センチほどの支柱に張ったネットに、つるを絡ませて育てる。5月に種芋を植えると、夏に緑の葉が茂る。11月上旬までに霜に2度ほど当たると葉の色が変わり、光合成が止まり、芋の肥大が完了する。

 農家は、積雪を挟み2度に分けて芋を掘る。12月中旬までの「秋掘り」で6割、翌年3月下旬の雪解け後の「春掘り」で4割を収穫する。地元のJAゆうき青森は、今年産の出荷量を「大きな気象災害もなく、管内全体で平年並みの8500トンが見込める」(営農指導課)と話す。

 同町で2・3ヘクタールを栽培する木村拓也さん(39)は「黄色の葉を見ると、今年の農作業の総決算だと実感する」と気を引き締めていた。

 JA管内は、農家が苦難の末に築いた大産地だ。北東から吹く冷たい風「やませ」に悩む同地は、長年にわたり稲に代わる作物を模索。だが、大豆やナタネ、テンサイなど、いずれも軌道に乗らなかった。

 転機は1964年にやってきた。東北町農協(当時)が、地元に多い深い赤土の畑での栽培に向き、需要も見込めるナガイモの普及に着手。増産体制を整え、産地化に成功し作付けを広げた。

 現在、JA管内の東北町、七戸町、野辺地町、六ケ所村で合わせて517戸が418ヘクタールで生産している。重労働だった収穫も機械で省力化し、1戸当たりの平均栽培面積は80アールにまで増えた。

 JA営農指導課の高松康彦課長は「今ではナガイモは地域農業の柱。野山とはひと味違うこの紅葉は、農家の粘りが生んだ景色だ」と話す。(染谷臨太郎)

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