「今だけ、金だけ、自分だけ」

 「今だけ、金だけ、自分だけ」の「3だけ主義」がばっこする▼東京大学大学院の鈴木宣弘教授が『食の戦争』(文春新書)で使って広まったが、最近の大企業の不祥事を見ると、いかにもぴったりくる。品質、燃費、免震・制振オイルダンパーと検査データの改ざんを繰り返し、顧客の安全性より売り上げに躍起になる。姑息(こそく)さに、心底怒りが湧く▼そんな財界に後押される自由貿易が迫る。農業がこれまでにない市場開放にさらされる「TPP11」の年内発効が決まった。年明けには、米国とのTAG交渉でさらに農畜産物の輸入圧力が強まる。高齢化に悩む中山間地を抱える国内農業は、ますます窮地に。自動車や輸出企業優先に地方では怒りの“マグマ”が膨らむ▼「3だけ」を最も嫌ったのは「日本資本主義の父」渋沢栄一だったろう。有名な『論語と算盤(そろばん)』(角川ソフィア文庫)から引く。「富をなす根源は何かといえば、仁義道徳。正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ」。道徳と離れた欺瞞(ぎまん)、不誠実、権謀術数的な商才は、真の商才ではないと言う。道徳を重んじた「士魂商才」は至言である▼きょうは渋沢の青淵忌(せいえんき)。きっと泉下で嘆いているに違いない。今と金と自分しか見えない経営者がなんと多いことかと。

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