農地バンク見直し 話し合いこそ重要

高棚町の農地利用について話し合う山村さん(左から2人目)、加藤専務(同3人目)ら(愛知県安城市で)

 政府・与党による農地中間管理機構(農地集積バンク)の5年後見直しの調整が今週ヤマ場を迎える。農地集積・集約を進める現場からは、地域の話し合いを重視するとともに、農地利用調整に役割を果たしてきたJAなどを制度に位置付けるよう求める声が上がる。成果を上げる地域の声を取材した。(岡部孝典、松本大輔)
 

信頼関係で集積進む 福岡県大川市


 福岡県大川市川口地区。約60人で水稲・麦・大豆など約60ヘクタールを手掛ける農事組合法人・べにやの龍靖男さん(77)は「農地を集積するには、地域で話し合いを積み重ねるしかない」と言い切る。

 地区の農地面積は約237ヘクタール。うち約145ヘクタールを、農地集積バンクを活用するなどして集落営農法人や認定農業者などの担い手に集積する。「高齢化が進み、農地の面的集積が欠かせなくなっている」(龍さん)との危機感を地域で共有し、将来の農地利用を巡る話し合いに力を入れる。

 軸となるのが、2012年につくった「人・農地プラン」だ。それにより、農地の受け手が明確になった。作成後も毎年9月と3月に地域の農業関係者を集めて見直し作業をする。今年度からは、農地の出し手を掘り起こす個別相談会も開く。市や地元のJA福岡大城、農業委員会が音頭をとる。

 当初、農家には農地の貸し出しに抵抗感もあった。だが、地道な活動の積み重ねで「農地集積の機運が高まった」(市農業水産課)。龍さんは「JAや市の職員らが支援してくれるから、みんなついてくる。信頼関係がなければ集積は進まない」と、顔の見える関係の重要性を強調する。

 政府・与党による農地集積バンク見直しについて、龍さんは「地域の話し合いを後押しする制度にしてほしい」と望む。
 

JA介し円滑に調整 愛知県安城市


 「JAが間に入ることで受け手の農家も信頼され、農地を集められる」

 愛知県安城市高棚町。地域の水田378ヘクタールのうち280ヘクタールを集積する農事組合法人・高棚営農組合の前代表理事・山村卓久さん(67)が強調する。水稲・麦・大豆をブロックローテーションで作付けする農地の9割超は、農地利用集積円滑化事業を使い、JAあいち中央を通じて利用権を設定する。

 1974年設立の組合は、農用地利用増進事業や農地保有合理化事業、円滑化事業などを活用し、農地を集積・集約。農地を誰に集め、どの農地で何を作るか──などは、人・農地プランの制度化前から、地域の農家や地権者らでつくる「農用地利用改善組合」で徹底的に話し合う。必ずJAの支店長や営農担当職員らが同席し、地域一体で利用調整してきた。

 「農地の相談はJAにするのが定着している。身近なJAでないと調整役はできない」と山下さん。農地集積・集約の制度に、改めてJAを位置付けるべきだと考える。

 受け手農家の公募や、受け手・出し手の承諾なしに利用調整できる「白紙委任」が前提の機構に不安を覚える農家もいる。同市里地区で水稲・麦・大豆48ヘクタールを経営する畔柳久さん(68)は「知らない人が入ってきて、ブロックローテーションが壊れかねない」と懸念する。

 同市の耕地面積3100ヘクタールのうち、円滑化事業による利用権設定は1885ヘクタール、機構は174ヘクタール(3月末現在)。政府内には円滑化事業の廃止案も浮上するが、「良い部分を評価してほしい」と、JAの加藤新一専務は指摘する。 
 

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