農村楽しむ散歩道整備 風景、日常 ぶらり体感 広がるフットパス 都市との交流 新たな一手

乗馬体験で人気のポニーの世話をする押田さん(北海道別海町で)

 英国発祥で、森林や田園など、農村のありのままの風景を楽しめる歩行者用の小道「フットパス」が、広がってきた。じっくり地域を歩くことで農村の日常を知るきっかけになり、農家や地元住民は「都市農村交流の新たな一手になる」と意欲的だ。北海道では50近い自治体で広がり、熊本県では1000キロ近いフットパスが整備されている。草刈りなど維持、看板やトイレ設置といった地元の負担をどう解消するかが普及の鍵となる。

 

北海道


 牧草地が広がる北海道別海町。酪農家の押田栄司さん(77)は10年前から、地域活性化の夢を描き、仲間たちとフットパス造りに取り掛かった。旧国鉄の標津線跡地を散策できるよう、草刈りなどをして地道に整備。毎年数回、地元住民や愛好者、都会の学生らを招いてツアーを実施する。フットパスは全長16キロに上る。乗馬体験などイベントも盛り込み、押田さんは多くの人と一過性ではない交流を重ねてきた。

 道外からも訪れる“知る人ぞ知る”フットパスのコースになったが、課題がある。フットパスを維持する同町グリーンツーリズムネットワークの個人会員数は初期に比べて半分以下の10人(団体含む)となり、受け入れる民宿も減ってきた。JA道東あさひの長年の支援が大きな支えになっているものの、押田さんは「定期的な草刈りをしてフットパスを維持管理するのが大変。後継者もいないので、農家が手弁当で息長く続けるのが難しくなってきた」と苦労を明かす。それでも地元の人にも開拓の文化を伝えるきっかけになり、都市農村交流や地域活性化には手応えを感じ、行政との交渉も自力で進める。

 同町の近隣にある根室市では、酪農家集団「AB―MOBIT」が2003年から、消費者に農村を歩いて自然に農業の意義を理解してもらおうとフットパスを整備してきた。牧場を身近に感じられる全長50キロのフットパスには、年間5000人弱が訪れる。「AB―MOBIT」の伊藤泰通さん(54)は「条件不利地のありのままを知ってほしい」と思いを込め、普及に尽力する。

 フットパス・ネットワーク北海道の小川巌事務局長によると、道内50近い自治体でフットパスに取り組む。小川事務局長は「観光地を巡るだけでなく、農家らとの触れ合いや農村の日常を知ることができるフットパスへのニーズが高まっている。標識、トイレの設置など地元に負担がある。農家だけで維持するのは大変なので、関係者、歩行者を巻き込むことが鍵になる」と指摘する。
 

熊本


 日本フットパス協会によると、北海道だけでなく、九州でも盛んだ。中でも熊本県では、歩く人を歓迎する地域づくりを進め、県内でフットパスは1000キロに上るという。同県美里町でフットパスを造ってきた農家の井澤るり子さん(67)は「歩く人が地域の価値を気付かせてくれる。歩く人は生活圏を散策するので感謝の気持ちを持つこと、地元はようこその気持ち。双方が思いを寄せることが大切」と考える。その上で「農繁期はイベントをしないなど地元の負担感を軽減する仕掛けが必要だ」とみる。
 

維持負担軽減を 日本フットパス協会の尾留川朗理事の話


 北海道や九州だけでなく新潟県十日町市や栃木県那珂川町など農山村各地で近年、フットパスを核にした地域おこしを目指す動きがある。新しい形の地域再生と新たな観光に需要が高く、今後も広がるだろう。農家や地元住民が主体となっているケースが多いが、課題もある。持続的に続けるために、地元の負担をどう解消するかが問われる。補助やコーディネートなど行政の後方支援も欠かせない。

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