暖冬どうする 生育前進 着色遅れ 水不足…
2018年11月16日

JA職員と結球レタスの出荷時期を打ち合わせる福田さん(左)(15日、北海道浦河町で)
雪や寒さを生かして農作物を栽培、保存する農家やスキー場近隣の農家民宿の経営者らが、暖冬の気配に気をもんでいる。冬野菜の産地は、鍋物需要などへの影響に不安を募らせる他、暖冬対策に着手。水不足への懸念もある。気象庁は太平洋赤道域で海面温度が上昇しエルニーニョ現象が発生したとみられる影響で、今冬は雪が少なくなると見通す。同庁が15日発表した1カ月予報でも広い範囲で気温が高くなる見込みで、農作物の管理に注意を呼び掛ける。
冬取り結球レタスの産地化を進める北海道浦河町内では、9月~11月上旬が高温傾向で推移したことでレタスの凍結などがなく、品質良好で順調に生育。冷涼な気温を好むレタスに合わせ、温度管理に気を付けてきた一方、本格栽培から2年目ということもあり、一部でレタスの出荷が大幅に早まった。
結球レタスを今年初めて栽培した福田豊さん(66)は、使用していない夏秋イチゴの高設ベッドで作付けし、16日に初出荷を迎える。日高農業改良普及センターやJAひだか東の助言を基に高温傾向の中、毎日側窓や入り口を開け閉めして温度を管理したという。福田さんは「暑くなり過ぎないようかなり気を配った。凍結などはなく、ほっとした」と話した。
同町内では、道産の端境期となり、価格の高い11月下旬~翌3月を狙って出荷する。一方、一部のハウスでは、生育が急進し、出荷が前倒しした。同町で就農2年目の濱田憲一さん(48)は、10月中旬に出荷を開始。レタス前作のトウモロコシが今年の全道的な日照不足により大幅に減収した上、昨年は冷え込みにより出荷できない株が発生。挽回したい気持ちと、昨年の反省から、種まきを10日ほど早めたことが響いた。濱田さんは「種まき時期を見極められなかった」と悔しさをにじませる。
JAによると町内では今年、10戸が78アールを作付けし、前年の4倍となる6万4000玉の出荷を計画する。
寒締めホウレンソウ栽培が盛んな岩手県JA新いわては、農家はハウスの換気窓の開閉で温度を調整するなど暖冬対策に着手した。同JA県北園芸センターの南黒沢直人営農指導員は「寒さに当てて糖度を確保する。今後寒さが強まらないようだと収穫が遅れることもある」と心配する。既に年末需要を見込む小松菜の生育が1カ月ほど早まるなど影響が出ている。
日本有数の豪雪地帯、新潟県のJA津南町は、雪の下で熟成させる雪下ニンジンが特産だ。暖冬予想に、同JA営農センターの桑原武彦さんは「雪が少ないといっても平地でも1・2メートルくらいは積もる」として、品質や生育には影響はないと見通す。心配なのは雪不足でダムの貯水量が少なくなることだ。地域は昨夏、干ばつに見舞われ発芽不良などの被害が出ただけに事態を懸念する。
温州ミカンの産地、和歌山県JAありだは、暖冬による露地ミカンの着色遅れや浮き皮、腐敗果を防ぐため、ジベレリンや防腐剤散布など対策の徹底を呼び掛ける。
長野県のJA大北は、スキー場近隣で宿泊業を営むJA組合員もいることから、雪不足によるスキー客の減少は深刻な問題だ。暖冬だった2016年には、寡雪対策本部を設け、宿泊業を営むJA組合員向けに融資相談を行った。金融部の立岩満課長は「雪不足になれば地域経済への影響が大きい」と話す。
気象庁は11月、大気の流れや気圧に影響し、世界的な異常気象を引き起こすとされるエルニーニョ現象が発生したとみられると発表した。秋に発生すると、日本では西高東低の冬型の気圧配置が強まりにくく暖冬になりやすくなる。同庁が観測を開始した1949年以来16回目で、発生は2年ぶり。
前回発生した、2015年から16年の冬(12~2月)は、最高気温の観測も各地で相次ぐ記録的な暖かさとなった一方、雪を伴う寒波も襲来。暖冬が続いていただけに、ハウスの倒壊や農作物の凍害など甚大な影響を及ぼした。
同庁によるとエルニーニョ現象が発生している冬は、特に関東、北陸、東海、信越地域で平均気温が高く、降水量は北海道や東北の日本海側で少ない傾向。同庁が15日発表した12月16日までの予報では、北海道、東北、関東甲信、東海で気温がかなり高くなり、他地域でもやや高まる見通しで冬野菜や果樹の生育に影響が及ぶ恐れがある。
レタス管理 気抜けぬ 北海道
冬取り結球レタスの産地化を進める北海道浦河町内では、9月~11月上旬が高温傾向で推移したことでレタスの凍結などがなく、品質良好で順調に生育。冷涼な気温を好むレタスに合わせ、温度管理に気を付けてきた一方、本格栽培から2年目ということもあり、一部でレタスの出荷が大幅に早まった。
結球レタスを今年初めて栽培した福田豊さん(66)は、使用していない夏秋イチゴの高設ベッドで作付けし、16日に初出荷を迎える。日高農業改良普及センターやJAひだか東の助言を基に高温傾向の中、毎日側窓や入り口を開け閉めして温度を管理したという。福田さんは「暑くなり過ぎないようかなり気を配った。凍結などはなく、ほっとした」と話した。
同町内では、道産の端境期となり、価格の高い11月下旬~翌3月を狙って出荷する。一方、一部のハウスでは、生育が急進し、出荷が前倒しした。同町で就農2年目の濱田憲一さん(48)は、10月中旬に出荷を開始。レタス前作のトウモロコシが今年の全道的な日照不足により大幅に減収した上、昨年は冷え込みにより出荷できない株が発生。挽回したい気持ちと、昨年の反省から、種まきを10日ほど早めたことが響いた。濱田さんは「種まき時期を見極められなかった」と悔しさをにじませる。
JAによると町内では今年、10戸が78アールを作付けし、前年の4倍となる6万4000玉の出荷を計画する。
寒締め心配 スキー客は?
寒締めホウレンソウ栽培が盛んな岩手県JA新いわては、農家はハウスの換気窓の開閉で温度を調整するなど暖冬対策に着手した。同JA県北園芸センターの南黒沢直人営農指導員は「寒さに当てて糖度を確保する。今後寒さが強まらないようだと収穫が遅れることもある」と心配する。既に年末需要を見込む小松菜の生育が1カ月ほど早まるなど影響が出ている。
日本有数の豪雪地帯、新潟県のJA津南町は、雪の下で熟成させる雪下ニンジンが特産だ。暖冬予想に、同JA営農センターの桑原武彦さんは「雪が少ないといっても平地でも1・2メートルくらいは積もる」として、品質や生育には影響はないと見通す。心配なのは雪不足でダムの貯水量が少なくなることだ。地域は昨夏、干ばつに見舞われ発芽不良などの被害が出ただけに事態を懸念する。
温州ミカンの産地、和歌山県JAありだは、暖冬による露地ミカンの着色遅れや浮き皮、腐敗果を防ぐため、ジベレリンや防腐剤散布など対策の徹底を呼び掛ける。
長野県のJA大北は、スキー場近隣で宿泊業を営むJA組合員もいることから、雪不足によるスキー客の減少は深刻な問題だ。暖冬だった2016年には、寡雪対策本部を設け、宿泊業を営むJA組合員向けに融資相談を行った。金融部の立岩満課長は「雪不足になれば地域経済への影響が大きい」と話す。
エルニーニョ2年ぶり 来月も気温高く
気象庁は11月、大気の流れや気圧に影響し、世界的な異常気象を引き起こすとされるエルニーニョ現象が発生したとみられると発表した。秋に発生すると、日本では西高東低の冬型の気圧配置が強まりにくく暖冬になりやすくなる。同庁が観測を開始した1949年以来16回目で、発生は2年ぶり。
前回発生した、2015年から16年の冬(12~2月)は、最高気温の観測も各地で相次ぐ記録的な暖かさとなった一方、雪を伴う寒波も襲来。暖冬が続いていただけに、ハウスの倒壊や農作物の凍害など甚大な影響を及ぼした。
同庁によるとエルニーニョ現象が発生している冬は、特に関東、北陸、東海、信越地域で平均気温が高く、降水量は北海道や東北の日本海側で少ない傾向。同庁が15日発表した12月16日までの予報では、北海道、東北、関東甲信、東海で気温がかなり高くなり、他地域でもやや高まる見通しで冬野菜や果樹の生育に影響が及ぶ恐れがある。
おすすめ記事

[あんぐる] すき振るえ雨よ降れ 砂かけ祭(奈良県河合町)
奈良県河合町の廣瀬神社で毎年2月11日、農家役の「田人(たひと)」や参拝者が境内の砂を掛け合う、「砂かけ祭」が開かれる。砂は田畑を潤す水の象徴で、激しく飛び交うほど十分に雨が降り豊作になると伝わる。
祭りの当日、同神社の境内に、竹としめ縄で四方を仕切って水田を模した一角が現れる。広さ約60平方メートルの砂地で、砂の掛け合いに備え、世話役の農家がトラクターで軟らかく耕した。
祭りは米作りの所作を一通り行う「殿上の儀」から始まり、その後、境内に頭巾をかぶった白装束の田人が登場。砂の水田を耕しながら一周した後、手にしたすきで集まった人々に勢いよく砂を浴びせ始めた。
参拝者も田人に砂を掛け返すのが、この祭りの特徴だ。ゴーグルや雨がっぱを身に着け、手ですくい取った砂をぶつけて“応戦”。砂の応酬は休憩を挟んで1時間ほど続き、境内に人々の歓声や悲鳴が響いた。
同県橿原市から友人と訪れた吉田緑さん(60)は「見物客に砂を掛ける祭りなんて聞いたことない。逃げ回ったが砂だらけになった」と笑った。
廣瀬神社は紀元前89年創建と伝わり、日本書紀にも名が残る。675年には雨乞いや豊作祈願の祭りを行っていたとする記録もある。
宮司の樋口俊夫さん(71)は「この辺りは昔からは雨が少ない。水を求める農家の思いが祭りを生んだのだろう」と話す。
祭りの終盤には、地元産のもち米で作り、農家らが「田」の文字を押印した餅と、厄よけになる松葉をわらで巻いた松苗をやぐらからまき、五穀豊穣(ほうじょう)を願った。
世話役の一人で、稲作農家の山崎清兆さん(80)は「1000年以上受け継いだ祭りを次の世代に伝えるのが私たちの務め。砂に勢いがあったので、今年も豊作が期待できそうだ」と話した。(富永健太郎)
2019年02月17日
中山間地ルネッサンス バイオマスに優先枠 雇用創出を後押し 19年度農水省
農水省は、予算に優先枠を設けて中山間地を支援する「中山間地農業ルネッサンス事業」の拡充を決めた。2種類ある関連事業の優先枠の予算規模をそれぞれ増額。その上で、バイオマス施設の整備でも、優先枠を新たに設ける。農産物にとどまらない中山間地の資源を幅広く活用し、雇用創出などを後押しするのが狙いだ。2019年度から始める。
2019年02月17日
ため池 適正管理へ 法案を閣議決定 政府
政府は19日、農業用ため池の管理保全法案を閣議決定した。決壊による災害が起きるのを防ぐため、防災上重要なため池の改修などを進めることが柱。管理や防災工事にかかる費用は国や自治体が支援することも盛り込んだ。梅雨や台風への備えが進むよう、今国会での早期成立を目指す。
吉川貴盛農相は、同日の閣議後会見で、法案の狙いとして農業用水の確保と決壊による水害などの防止を挙げ「ため池の管理はこれから最も大切になる」と強調した。
法案では、所有者や管理者が都道府県に届け出することを義務付け、豪雨や耐震対策など適正な管理を求める。不適切だった場合、都道府県が勧告する。
人的被害を含め周辺地域に被害を与える恐れがある農業用ため池を都道府県が「特定農業用ため池」に指定し、着実に防災工事を実施させる。利用はあるが所有者が不明な場合、市町村が管理権を得ることができるようにする。20年度までに指定した全てのため池でハザードマップの作成を掲げる。
国や自治体は、ため池の管理に必要な資金や技術指導を所有者らに支援する。国は都道府県に対し、防災工事にかかる費用の一部を補助する。
農業用ため池を巡っては、2018年7月の西日本豪雨で広島県など6府県で32カ所ため池が決壊した。農水省によると、国が把握するため池9万6000カ所のうち、30%の2万8700カ所は、所有者が不明だ。
2019年02月20日
液体ミルク 災害用へ備蓄続々 国内製造・販売も加速
国内での製造・販売が解禁された乳児用液体ミルクを災害用に備蓄する動きが自治体で出ている。災害時に乳幼児を守るためとし、東京都文京区や群馬県渋川市、大阪府箕面市が2019年度予算案に盛り込んだ。国内メーカーも製造・販売の準備や商品化の検討に入っており、今後各地の自治体で備蓄の動きが活発化しそうだ。
乳児用液体ミルクは粉ミルクのように湯で溶かす必要がなく、災害時にも、すぐに乳児に飲ませられる。11年の東日本大震災、16年の熊本地震の際に海外からの救援物資として持ち込まれ、関心を集めた。日本では昨年8月に厚生労働省が製造・販売を解禁した。
東京都文京区は昨年11月に区内の私立大学4校や製造メーカー、出版社と共同事業体(コンソーシアム)を形成。4校を妊産婦、乳児向けの救護所に指定し、災害時に乳児160人が1日半利用できるよう、125ミリリットル入り液体ミルクパック2000個と使い捨ての哺乳瓶を備える。新年度予算案に備蓄関連費用で260万円を計上した。
群馬県渋川市も2月下旬開会予定の市議会に提案する新年度予算案に備蓄費用として約56万円を計上する方針を固めた。紙パック(125ミリリットル)入りの液体ミルクを3日分として420本、保健センターに備蓄する。
大阪府箕面市も19日開会の市議会に国産の乳児用液体ミルクを備蓄する費用12万7000円を盛り込んだ予算案を提出する。常時600個(1個125ミリリットル)を公立保育園に備蓄する。
乳児用液体ミルクの製造・販売の動きも加速する。江崎グリコや明治が製造に向け準備を進める他、森永乳業や雪印メグミルクが商品化を検討する。渋川市の担当者は「製造メーカーが増えることで価格や質の向上が期待され、液体ミルクの備蓄を検討する自治体は今後増えるのではないか」とみる。
2019年02月17日

移住希望 長野1位 北海道 一躍3位 相談窓口、セミナー奏功 ふるさと回帰支援センター 18年
ふるさと回帰支援センターは19日、2018年の移住希望地域ランキングを発表した。1位は昨年に続き長野県、2位は静岡県(昨年3位)だった。3位の北海道は、昨年の16位から大幅に順位を上げた。同センターへの年間相談件数は初の4万件を超え、移住への関心が高まっている。
北海道では16年から移住の相談窓口を設置し、積極的にセミナーを開催。昨年は20位圏外だった佐賀県もセミナーや出張相談会などの機会を増やしており、同センターは「細やかな対応が、移住希望者の増加につながった」と分析する。
セミナーや相談会も年間で539回と過去最多の開催数となり、「移住が一般的に周知されてきた」(同センター)。また、移住までは踏み込めないという層に向けて、「移住」という言葉をあえて使わないセミナーも増えており、見せ方が多様化している。
センター利用者の70%以上が20~40代が占めるようになり、「移住の条件として、就労が前提となっている」と同センター。移住希望先として仕事が見つけやすい地方都市(市街地)のニーズが高まっている。一方、センターに来る相談者の出身地は関東が45%、そのうち東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)が39・5%を占めており、「東京圏の人ほど田舎に憧れがあるのではないか」(同センター)とみる。
調査は、センターを訪れた移住相談者へのアンケート結果(回答数9776件)を集計した。
2019年02月20日
営農の新着記事

JA営農指導実践全国大会 最優秀 田中さん(和歌山・紀州) ミニトマト出荷調製 実需者負担を評価
全国のJAの営農指導員の取り組みを審査・表彰する「JA営農指導実践全国大会」が21日、東京都内で開かれ、和歌山県JA紀州の田中俊史さん(40)の活動報告が、最優秀賞に輝いた。審査員特別賞には、青森県JAつがる弘前の鈴木美喜子さん(41)が選ばれた。JA紀州は、強固なミニトマトの産地を育成した点が評価された。JAつがる弘前は、リンゴ産地の中にピーマン産地を新たに生み出した。
2019年02月22日
バンカーシート 供給量 右肩上がり IPM普及で講演会
総合的病害虫・雑草管理(IPM)による防除の普及状況を共有しようと、東京農業大学総合研究所研究会生物的防除部会は21日、東京都世田谷区で講演会を開いた。研究者や農薬メーカーの担当者ら50人が参加。講演を通じて炭酸ガス処理装置や天敵温存資材の活用方法を確認し、IPMの今後を展望した。
2019年02月22日

「営農再開せず」「未定」計6割に 福島の12市町村調査
東京電力福島第1原子力発電所事故で被災した福島県内12市町村の農業者に対する営農再開調査で、「営農再開の意向なし」と「未定」が合わせて6割に上ることが分かった。東北農政局と福島県、福島相双復興推進機構で構成する福島相双復興官民合同チームが公表した。
同チームが2017年4月から18年12月末まで、12市町村の農業者1429人を個別訪問して意向を聞いた。「営農再開済み」(25%)と「今後、再開の意向」(15%)は合計で40%となる一方、「再開意向なし」45%、「再開未定」15%となった。
調査では、現状抱える課題も聞いた。営農を再開した農業者の課題(複数回答)は「農業機械・施設・家畜・新規作物等導入」が41%、次いで「労働力確保」と「販路や販売単価の確保」が21%となった。今後、営農再開の意向ある農業者の課題(同)として「野生鳥獣の被害防止対策」41%、「用排水路復旧」36%などが挙がった。
再開の意向がない・未定の主な理由は「高齢化や地域の労働力不足」と「帰還しない」がそれぞれ39%、「機械・施設等の未整備」は20%となった。
同チームは市町村などと連携してアンケートを追加実施し、実態を把握した上で、支援を強化する。
2019年02月05日

ウリ科野菜の苗 ロボットが挿し接ぎ 熟練者並み速さ・精度 サカタのタネが発売
ウリ科野菜の苗を、「挿し接ぎ」という手法で接ぎ木するロボットが世界で初めて開発された。この接ぎ木法は、従来の手法に比べて生育向上が見込めるが、作業が難しく、熟練技術が必要だとされていた。ロボットで難しい技術が半自動化できるため、高齢化や人手不足が課題となっている苗生産の現場で活用できる。経験が浅い農業者でも、ベテラン並みのスピードと精度で挿し接ぎが可能だ。サカタのタネが2月、全国に向けて発売した。
2019年02月05日

日本農業賞 大賞に7個人・団体
JA全中とNHKは31日、第48回日本農業賞(全中、JA都道府県中央会、NHK主催)の受賞者・団体を発表した。個別経営の部は、富山県入善町のアグリゴールド矢木、静岡県浜松市の京丸園、愛知県幸田町のマルミファームが大賞を受賞した。集団組織の部は、仙台市の農事組合法人井土生産組合、長野県飯田市のみなみ信州農業協同組合柿部会、長崎県雲仙市の島原雲仙農協雲仙ブロッコリー部会が大賞。食の架け橋の部は、愛知県豊橋市の河合浩樹さんが大賞に選ばれた。
経営や技術の改善に取り組み、地域社会の発展にも貢献する農業者や営農集団などを表彰。食の架け橋の部は、農業者と消費者を結ぶ優れた活動や地域づくりのヒントになる食や農の活動をたたえる。
特別賞は、個別経営の部で栃木県鹿沼市のJB.YASHIKI、集団組織の部で茨城県筑西市のJA北つくばこだま西瓜部会が受賞した。食の架け橋の部は、宮崎県西米良村の小川作小屋村運営協議会だった。
応募は個別経営の部で91件、集団組織の部で95件、食の架け橋の部で32件。審査会(委員長=大杉立東京農業大学客員教授)が選んだ。受賞式は3月9日、東京都渋谷区のNHKホールで開く。
優秀賞などの受賞者・団体は次の通り。
◇優秀賞▽個別経営の部=北ファーム(金沢市、水稲、大麦)カーライフフジサワ(岡山市、水稲、二条大麦)西村鉄舟・綾(長崎県諫早市、カーネーション、ガーベラ)▽集団組織の部=TOKYO X生産組合(東京都八王子市、養豚)JAならけんハウス柿部会(奈良県五條市、ハウス柿)観音池ポーク出荷組合(宮崎県都城市、養豚)▽食の架け橋の部=人と種をつなぐ会津伝統野菜(福島県会津坂下町、野菜)フレッシュ・クラブ(大阪府東大阪市、野菜、水稲)◇奨励賞▽食の架け橋の部=ワインツーリズムやまなし(甲府市、ブドウ)
2019年02月01日
日本農業賞・大賞 喜びの声 感謝…仲間に、地域に
第48回日本農業賞の受賞者が31日、決まった。先進的な経営や技術の改善に取り組み、担い手として地域の発展に貢献している農家や生産部会、法人と、食と農をつなぐ優れた個人や団体を選んだ。大賞受賞者に喜びの声や今後の抱負を聞いた。
個別経営
米+園芸通年雇用 ■アグリゴールド矢木代表・矢木龍一さん(55)=富山県入善町
目標にしていた賞だけに大変うれしい。富山ではあまり盛んではない施設園芸に取り組み、地域では早くから通年雇用を実現した。担い手不足が懸念される中、農業を魅力ある仕事にするため、一層労働環境を良くし、全国の農業経営者が目指す見本になりたい。
▽受賞理由=100ヘクタールを超す水稲に加え、冬場の雇用を確保するため2014年からミニトマトの施設栽培を開始した。17年にはイチゴ栽培にも取り組み、県内の農業法人では初めてグローバルGAP(農業生産工程管理)を取得。一年を通じで収益確保につなげた。
障害者を積極採用 ■京丸園代表・鈴木厚志さん(54)=静岡県浜松市南区
多様な人たちが力を発揮できるユニバーサル農業の取り組みが評価されうれしい。これまで支えてくれた顧客や、活動を後押ししてくれた福祉関係の人たちに感謝している。地元JAとの協力とさらなるブランド化を進めて、これからも全国に安心・安全の野菜を届けたい。
▽受賞理由=障害者や女性の積極雇用を推進。水耕栽培の芽ネギ、ミツバなど主力の小型野菜を中心に20年で売り上げを4倍、4億円に伸ばした。
良質な豚安く作る ■マルミファーム代表・稲吉克仁さん(48)=愛知県幸田町
大賞を頂けて、驚いているとともに、うれしい。父が取り組んできたことを引き継いで続けてきた。設備や機械を社員が頑張って使いこなし、良い成績を上げることができたおかげで評価を得られたと思う。全国の仲間から情報をもらえ、地元の理解もあった。多くの人に感謝したい。
▽受賞理由=繁殖・肥育一貫の養豚経営でリキッドフィーディングの導入、高生産性豚品種への全頭切り替えなどに取り組み、粗利益や出荷枝肉重量などで全国トップクラスの経営を実現。良質な豚を「高く売るより安く作る」という理念で新しい畜産経営を目指す。
集団組織
被災から再生尽力 ■農事組合法人井土生産組合代表理事・鈴木保則さん(58)=仙台市
受賞は大変うれしい。東日本大震災を経て法人の設立後、さまざまな面で支えていただいたJAグループや関係機関、消費者などに感謝したい。今後も周りとの絆を大切にしていく。まだ被災地の農業復興は道半ば。自分たちと同じ境遇の周りの法人との連携も深め、復興に尽力したい。
▽受賞理由=「われわれ15人が集落の農地を守る」という強固な意志で、東日本大震災の津波被害を受けた地域農業を再生。年間売上高1億5000万円にまで発展した。水稲は乾田直播(ちょくは)で多収量を実現。甘さや柔らかさが売りのネギを「仙台井土ねぎ」としてブランド化。6次産業化や消費者との交流にも積極的だ。
「市田柿」品質誇り ■みなみ信州農業協同組合柿部会部会長・常盤昌昭さん(74)=長野県飯田市
受賞は、長い歴史の中で産地を築いてきた農家の先輩方、JA、行政、研究機関をはじめとした多くの皆さんの努力の結晶だ。そうした先人に敬意を払いたい。若手を育成し、「市田柿」を守る使命と責任を部会組織一丸で果たしていきたい。
▽受賞理由=2060人の部会員で、特産干し柿「市田柿」を年間1500トン生産し、販売額は20億円に上る。品種を統一し、収穫時期の目安を設定するなどで原料柿の品質をそろえる。2016年には県内初の地理的表示(GI)保護制度に登録。輸出にも取り組む。
部会一丸後継育つ ■島原雲仙農協雲仙ブロッコリー部会部会長・本多幸成さん(60)=長崎県雲仙市
単価日本一を目指し、部会員一丸となって取り組んできたことが受賞につながった。まだ目標には届いていないが、努力が報われた気持ちだ。部会にはまだ伸びしろがあると思う。後継者やJAと共に、今以上の産地を目指していきたい。
▽受賞理由=部会員51人の半数超がブロッコリー専業農家。生産量は同県産の過半を占める。経営改善の意欲が高く、部会活動は活発。「若手後継者会」の設立や研修生の受け入れ・就農支援を手掛けるなど、若手農家の育成に注力する。
食の架け橋
異業種と連携活発 ■河合浩樹さん(56)=愛知県豊橋市
栽培だけでなく国産レモンの情報発信ができる農家を目指している。連携を評価されての受賞だが、取り組みの最大の背景は、多彩な品目を組み合わせ一年中出荷できる体系を整えた農業経営にある。受賞は関わってくれた人のおかげ。次のチャレンジを見据えたい。
▽受賞理由=異業種連携をする「初恋レモンプロジェクト」を結成し、イベントや多彩な加工品開発を手掛ける。無農薬レモンを30年にわたり栽培し、安定出荷を確立。ミカンオーナー制度や東三河地区の農家と「豊橋百儂人」をつくり地域農業の活性化を進める。
2019年02月01日

豚PMS判定広がる 区別化販売に生かす 開始1年で4400頭以上
昨年1月から始まった豚肉の脂肪交雑基準(PMS)判定を利用する生産者や流通業者が増えている。判定する日本食肉格付協会によると、1年間に4400頭以上で利用された。肉質改良目的や霜降り肉の優位性を高める狙い。国内市場で輸入豚肉の攻勢が強まる中、同協会は「国産の肉質を生かした区別化販売につなげてほしい」と話し、活用を呼び掛ける。
2019年01月30日
栄養成分分析できます 表示義務化に低価格で対応 大阪府立環境農林水産総研
大阪府羽曳野市にある府立環境農林水産総合研究所が、簡易分析器を活用し、農産加工品などの栄養成分の分析サービスを行っている。食品表示法で義務化された一般用加工食品の栄養成分表示の経過措置期間が2020年3月末で終了することを踏まえた取り組み。地方独立行政法人が同様のサービスをするのは全国でも珍しいという。昨年10月に始めてからの分析件数は15件だが、経過措置期間の終わりに向けて、ニーズが高まる見通しだ。
2019年01月29日
農作業事故「把握」37% JAの取り組み調査 啓発活動浸透も… 計画策定は32% 全中
JA全中は28日に農水省が開いた農作業安全に関する会議で、JAグループの取り組み状況を報告した。「農作業安全年間取組計画」を策定したり、農作業事故発生状況の把握をしたりするJAはまだ4割以下にとどまっていることが分かった。全中は「今後、しっかりやっていくよう提起したい」と農作業安全への一層の取り組みを促した。
2019年01月29日
口蹄疫 簡易検査30分で キット開発迅速対応へ 農研機構・日本ハム
牛や豚の経営に大きな被害をもたらす口蹄(こうてい)疫について、生産現場で約30分あれば簡易検査できるキットを、農研機構と日本ハムが開発した。発生の確定には東京都小平市にある同機構動物衛生研究部門での遺伝子検査が必要だが、このキットで現場で早期に疑いが分かれば、迅速な対応が期待できる。日本ハムは薬事承認を取得。農水省は近く、家畜伝染病予防法に基づく防疫指針を改定し、利用できる環境を整える方針だ。
キットの利用では、口蹄疫で特徴的な症状の水疱(すいほう)が破れた皮を採材。皮をすり潰して付属キットで前処理を行い、試薬の塗ってあるキットに検体を塗る。陽性の場合は20分ほどで線が浮かび上がる仕組みだ。
特別な 機材は不要で、キットだけで判定ができる。
キットは農家や一般の獣医師には販売せず、家畜保健衛生所に供給する。
同省は近日中に、牛豚等疾病小委員会を開き、同キットの判定をどのように運用するか議論する。検討結果は「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」に反映し、現場で利用を進める考えだ。
2010年に宮崎県で発生した際には牛や豚など約29万頭が殺処分され、多大な被害をもたらした。早期の判定が可能になれば、対策も迅速にできると見込む。
キットの名称は「NHイムノスティック 口蹄疫」。農水省のイノベーション創出強化研究推進事業で共同開発した。
2019年01月20日