物流効率化―野菜、果実も「乗車中」 広がる貨客混載

路線バスに設置したラックに農産物を詰め込むJA職員(愛知県豊田市で)

 バスや鉄道で貨物と旅客の運送を同時に行う「貨客混載」が、全国で広がっている。過疎地の交通網維持や物流効率化といった目的に加え、産地直送のイメージを武器に都市部に農産物を売り込むツールとしても活用が進む。愛知県豊田市では今月、地域の足として走る路線バスを活用した直売向け実証試験が始まった。
 

高速バス 都心で産直 


 大都市向けの産直として、高速バスを活用するJAが出てきた。

 JA金沢市と西日本ジェイアールバス金沢営業所は10月中旬に高速バスの空きスペースを使って農産物を運ぶ試験運用を実施。JA産の野菜などを高速バスで運び、東京都内のデパートのイベントや飲食店に提供した。今後は輸送上の課題を整理し、次回につなげる。

 JA全農やまなしと富士急行も高速バスを活用した「産地直送あいのり便」を8月に始めた。JA直売所が集荷した青果物や加工品を東京・新宿のデパートなどに運ぶ。輸送費減で消費者にお買い得感を持って購入してもらい山梨産のファンになってもらう取り組み。

 千葉県と長野県の6自治体は、合同で今月16日から計6日間の日程で、新宿駅高速バスターミナルで農産・加工品直売を開いている。千葉県市原市はJA市原市の梨サイダー、ダイコンなど約10事業者の産品を小湊鉄道の高速バスで輸送した。同市商工業振興課は「効率的な方法で首都圏の消費者に地元産品を知ってもらい、観光誘致にもつなげたい」と意気込む。
 

道の駅へ直送 路線バスで試験 JAあいち豊田 


 11月上旬。豊田市のJAあいち豊田本店。路線バス「とよたおいでんバス稲武・足助線(快速いなぶ)」の車内に次々と荷物が積み込まれる。バスの座席には、取り外しが可能な専用のラックが取り付けられ、ハクサイや梨「愛宕」、フルーツようかんなどの加工品合わせて約50キロが同市の道の駅「どんぐりの里いなぶ」へ向け出発した。

 道の駅は長野県との県境に位置し、年間約58万人が訪れる観光スポット。JAは管内で取れた農産物や加工品を道の駅で販売し、人気だ。

 これまでJAは、同施設を経営する(株)どんぐりの里いなぶへの農産物を、中間地点までJA職員が業務車両で配送し引き渡してきた。しかし、燃料費などの輸送コストや受け渡し時の効率が問題となっていた。バスを利用することで、これまで業務車両の輸送ではできていなかった、小ロットの出荷にも対応でき、輸送コストは業務車両の配送に比べ3分の1削減できる。収穫時期や栽培品目の差を生かした販売を確立し、多くの人に豊田の農産物を知ってもらいたい考えだ。

 行政とバス会社は、空きスペースの有効活用と運賃収入が期待でき、農家、消費者、参加企業それぞれにメリットが期待できる。

 JA営農部園芸販売課の熊谷実課長は「平野部で取れた作物を中山間地域でも販売でき、多くの人に地元産農産物を手に取ってもらえる。消費を増やし、少しでも農家の所得向上などに貢献したい」と話す。将来は平野部の農産物を山間部に輸送するだけでなく、山間部で採れた山菜などを輸送し、平野部の店舗で販売することも検討する。

 実証実験は原則、毎週金曜日に行う。午後0時半~1時にJA本店で積み込んだ農産物を、44・5キロ離れた道の駅まで1時間18分かけ走行する。期間は2019年3月31日まで。2月に成果と検証結果を示し、19年度からの本格運用を目指す。 
 

地域振興や路線維持も 


 道路運送法では少量貨物に限り、輸送業の許可なしで貨物の輸送を認める。国土交通省は、路線バスの乗客への影響がなく、重量が350キロ未満なら貨物輸送に問題はないとしていた。昨年は客の乗車スペース確保など一定の要件を満たした路線バスは350キロ以上の貨物も輸送できるよう規制を緩和した。同省自動車局は、「効率的な輸送は運送業の人手不足を補い、地域振興と運送業の収入向上で路線維持にもつながる」と期待する。

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