国連「小農宣言」 家族農業に大きな勇気

 国連委員会が、世界の家族農業の権利を守る宣言を採択した。小農の価値や役割を再評価し「食の主権」「種子の権利」を明記したことを評価する。だが大規模農業を進める米国など先進国は採択に反対し、日本は棄権するなど対立もあらわになった。小農を重視する世界の潮流と逆行する日本の農政を厳しく問いたい。

 小農宣言は、開発や人権問題を取り扱う国連総会の委員会で、賛成多数で採択された。正式名は「小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言」で、12月の国連総会で決議の運びとなった。今年に入り既に国連人権理事会で採択されていたが、総会委員会では初めて。世界の家族農業にとって画期的なものとなる。

 宣言はボリビアが中心となって提案し、粘り強い運動を続けてきた。国連はこの間、2007年の「先住民族権利宣言」、14年の「国際家族農業年」などに取り組んできており、その流れに沿ったものだ。この潮流は、来年から始まる「国連家族農業の10年」に引き継がれ、さらに大きなうねりとなるだろう。グローバリズムの対抗思潮としての家族農業の再評価と復権を後押しするものだ。

 宣言は、行き過ぎたグローバル経済が、途上国の資源を収奪し、環境を破壊し、人権をないがしろにしながら格差拡大を招いたことへの批判と反省がベースになっている。

 特徴は「小農」を家族農業だけでなく、農林水産業全般に広げ、それを支える家族や地域の人々と位置付けたこと。加盟国には、小農と農村で働く人々の協同組合を支援し、適切な措置を取るよう促す。「差別の禁止」では、特に農村女性の権利保護を求める。家族経営にとって死活的に重要な「食の主権」「種子の権利」「生産・販売・流通の関わる情報の権利」を明記した意義も大きい。種子については、管理・保護・育成、自家採取の権利を盛り込んだ。

 問題は、採択を棄権した日本政府の対応である。家族農業が主体の日本農業こそ、その重要性を積極的に評価すべきではないか。「小農学会」の共同代表、萬田正治鹿児島大学名誉教授は「反対よりたちが悪く、怒りを覚える」と言う。萬田代表は、小農を重んじる世界の潮流に反する日本の農政を厳しく批判、「農水省は地域を支える家族経営の農家を再評価し、国連の宣言を真摯(しんし)に見つめる必要がある」と指摘する。その通りであろう。

 この間の新自由主義的な「官邸農政」は、主要農作物種子法の廃止をはじめ、生産・流通・販売の自由化を推し進め、「食料主権」をないがしろにしてきた。国連の小農宣言、来年からの「家族農業の10年」を契機に、政府は農業・農村政策の在り方を見直すべきだ。生産者も宣言の意味を消費者と共に考え、持続可能な食と農の未来につなげていこう。 

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