貨物船衝突事故 長引く影響 ミカンの島苦境 交通規制、断水…でも負けぬ 山口県周防大島町

ミカン狩りを受け入れてきた岸田さん(山口県周防大島町で)

島民の生活物資を販売してきたAコープ久賀店直売コーナー(29日、山口県周防大島町で)

 周防大島町で発生した大島大橋貨物船衝突事故の影響で、ミカンの島が苦境に陥っている。ミカン狩りのキャンセルや直売所の売り上げの大幅な減少など、断水や交通規制により地域経済や暮らしに深刻な影響が及ぶ。事故から1カ月以上が過ぎ、インフラの復旧に見通しが立ったものの、影響は尾を引く見通しで、農家やJA山口大島は島ぐるみで復興を目指す
 

観光果樹園 適期なのに


 同町久賀で40年以上もミカン狩りを受け入れている「岸田みかん園」。いつもなら島外から訪れる観光客でにぎわう農園だが、今年は団体客は全てキャンセルになり平日だけでなく土・日曜日もほとんど客が来ない状態が続く。例年1000人を受け入れてきただけに、園主の岸田正吉さん(86)は、適期を迎えたのに収穫されないままのミカンを、無念の思いで見つめる。岸田さんは「収穫して直売所やJAに出荷しているが、1人では手が足らない。収入に多大な影響が出ているので何とか補償してもらえないか」と訴える。
 

直売所打撃 来客7割減


 JAの直売所「島の恵み本店」では最大で来店客が7割減、一番少ない日は11人程度と売り上げが激減した。商品が売れないため、出荷する生産者も出品を控えている状態だ。鮮魚も水を多く消費するため販売を中止している。同店の店長、横村貴顕さん(49)は「水道復旧の見込みが立ってきたので、まずは来店してもらって周防大島を応援してほしい」と呼び掛ける。
 

物資の輸送 JAも奔走


 暮らしや地域経済に深刻な影響が出る中、JAは事故発生直後から軽トラックを使用し、ミカンのピストン出荷や漁船をチャーターして海路での生活物資供給するなど、島民生活や農業経営を支えてきた。毎日給水所へ職員を派遣し、給水支援も行った。JAの木村昭彦組合長は「ミカンの出荷はこれからピークを迎える。今後は復興を目指し協同の力で頑張っていきたい」と力を込める。この他、Aコープ久賀店などでは生活物資を切らさない体制を取ってきた。
 

500リットルタンク 連日水運び


 島民は1カ月以上続いた断水に疲労感を募らせる。同町で農家民宿を経営し、ミカンを栽培する米重智恵子さん(58)は片道20分かかる給水所まで通い、500リットルの大型タンクで運ぶ作業を連日続けてきた。半日近く給水作業に要したため、農作業にも生活にも影響が大きかった。「報道も少なく島の状況が伝わっておらず、散々な思いをした」と打ち明ける。給水作業の負担などで骨折した島民も複数人いるという。
 

販売復活へ サイト開設


 復興を目指す動きもある。同町に移住して「瀬戸内ジャムズガーデン」を経営する松嶋匡史さん(46)は、事業者らと協力し、加工品やミカンを共同で売り込むサイトを立ち上げた。1000件の注文があるなど反響があった。松嶋さんは「待っていても島に人は来ない。これから歳暮シーズン、島の商品を利用してもらいたい」と呼び掛ける。平年に比べ8割客が少なくなった同町道の駅の岡崎竜一支配人は「イベントを仕掛けるなどして、島に来てもらうように頑張りたい」と前を向く。

<メモ> 大島大橋貨物船衝突事故

 ミカン栽培が盛んな島、周防大島町と本土側の柳井市を結ぶ大島大橋に、ドイツの海運会社が所有する貨物船が10月22日衝突した。送水管が破断して町内ほぼ全域が断水になり、通行規制も続いた。11月27日からは橋の一般車両の通行規制は解除となり、28日には一部で給水が再開された。町によると、損害賠償請求などは今後具体化していく。

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