来訪神 ユネスコ無形文化遺産に登録 世界が注目 継承に重み

秋田県男鹿市の「男鹿のナマハゲ」(同市提供)

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に登録された「来訪神 仮面・仮装の神々」。「男鹿のなまはげ」をはじめ8県の10行事は、無病息災や子どもの健やかな成長、五穀豊穣(ほうじょう)を願うなど、農業・農村の歴史と深いつながりがある。決定から一夜明けた30日、各地の関係者は登録の喜びを分かち合うとともに、次代へつなぐ重責に気を引き締めた。
 

他地域から受け入れも 「吉浜のスネカ」岩手県大船渡市


 「吉浜のスネカ」は岩手県大船渡市三陸町吉浜地区に伝わる豊作をもたらす行事で、小正月(1月15日)に、鬼とも獣ともつかない奇怪な面を着け、みのをまとったスネカが泣く子や怠け者を戒めるものだ。

 スネカは「スネカワタグリ」を縮めたもので、冬の長い間、いろりに当たって火だこができた怠け者のすね皮を剥ぎ取るのが由来だ。

 JAおおふなとの柏崎明彦常務は吉浜地区出身で、子どもの頃から参加した経験を持つ。柏崎常務は「大変素晴らしいが、継続することが大切。他地域の人で、行事に参加したい人を受け入れる気持ちも持たないといけない」と話す。また、「各家庭でお年玉袋にお小遣いを入れたり、ミカンを用意したりした」と当時を懐かしんだ。
 

小さな集落「見守って」 「見島のカセドリ」佐賀市


 佐賀市蓮池町に伝わる「見島のカセドリ」は300年以上にわたって受け継がれている。未婚の青年2人がかさをかぶり、わらみのを身に着けて、神の使いである「カセドリ」に扮(ふん)する。神社や民家で床を青竹で打ち付けて悪霊をはらい、五穀豊穣や家内安全を願う。

 JAさがの組合員で加勢鳥保存会の武藤隆信会長は今回の登録決定を喜ぶ一方で、「見物客が押し寄せたら行事を粛々と続けられるか、不安もある」と明かす。40人ほどの小さな集落で催す新年の行事だが、これまでも見物客が民家に断りなく入ってしまうことがあったからだ。「地域で長く守ってきた文化。面白半分ではなく、静かに見守ってほしい」と理解を求める。
 

農家集まり喜びを共有 「悪石島のボゼ」鹿児島県十島村


 農畜産業が主産業の鹿児島県トカラ列島の十島村。赤土を塗った仮面神「悪石島のボゼ」の登録に、島のコミュニティーセンターや鹿児島市内にある村役場に農家らが集まり、喜びを共有した。

 人口100人に満たない小さな島。若者を県外から呼び込み、移住者の暮らしと農業を応援。島民みんなでサカキやバナナの産地化を目指す。移住すれば自動的に保存会に入り、「ボゼ」を尊ぶ。旧暦の盆の時期は、農業を休み、島民全員で盆踊りに参加する。

 「悪石島の盆踊り保存会」の会長で農家の有川和則さん(66)は「みんな、良かったとの思いをかみしめている」と強調する。
 

少子化でも伝統次代へ 「能登のアマメハギ」石川県輪島市、能登町


 石川県能登町の稲作農家で、「能登町秋吉地区アマメハギ保存会」の会長を務める天野登さん(83)は「少子化で、アマメハギ役をしてくれる子どもが少なくなっているが、地域の小・中学生が行事に参加してくれる。農村文化と米作りは、何が何でも次世代に継承しなければ」と意欲を燃やす。
 

ナマハゲ体験して 秋田県男鹿市


 「男鹿のナマハゲ」の登録が決まった秋田県男鹿市の市観光協会は登録を記念し12月31日、ナマハゲ体験ツアーを初めて開く。行事に同行して見学する以外に「ナマハゲ役」と「ナマハゲ役以外の行事補助」で参加することもでき、集落で不足する担い手の募集も兼ねる。
 

由来は農業に 民俗学を研究する武蔵大学人文学部の福原敏男教授の話


 本来は豊作予祝(前祝い)のシンボルだった来訪神は、農業と密接に関わる。神々は歴史を経て、子どもを叱る神様になるなど、地域ごとに変容していったのだ。

 登録は各地の「農村文化を伝承していこう」というやる気を触発したと思う。それを観光資源として地域活性に生かせるかどうかは地域によって差が出てくると思う。

おすすめ記事

農政の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは