[達人列伝 72] 越冬キャベツ 北海道和寒町・川江峰さん(42) 極寒の畑が育む甘味 適正株間 品種ごとに探る

積雪を待つ川江さんのキャベツ(北海道和寒町で)

 北海道和寒町の「和寒越冬キャベツ」は、収穫後に雪の中に置くことで甘味を増す真冬の味覚。川江峰さん(42)は、確かな技術で毎年安定した収量を上げる。生産は手作業が続く重労働だ。川江さんが1シーズンに出荷するのは約10万玉に上る。収穫後はその全てを手で並べ、降雪を待つ。冬になれば氷点下20度を下回る吹雪の中で畑に向かい、深さ1メートル超の雪を掘って出荷する。

 越冬キャベツは、11月上旬に玉を根から切り離す「根切り」をした後、畑に自然に積もる雪の中で貯蔵する。出荷は翌年3月まで。一般的な冬キャベツよりも葉が肉厚で、甘味も強い。同町では1970年ごろに本格的な栽培を始めた。

 川江さんは2・2ヘクタールを手掛け、JAを通じ出荷する。品種は「湖月」と「冬駒」。天候不順の今年は、町内の生産者が2割ほどの減収に見舞われる中でも、平年並みの量を収穫した。

 安定生産の土台は土づくりだ。毎年、全ての畑で土壌分析をし、結果に応じて土壌改良材などを使い分ける。キャベツを植える畑では、春に緑肥としてマメ科植物のヘアリーベッチを栽培する。生育が均一に進み、玉ぞろいが良くなる効果がある。

 栽培技術は個人や部会の研究で確立してきた。株間は、周囲の助言も受け3年ほどの検証で探り当てた。「湖月」は、多少狭くても収量への影響は少ない。「冬駒」は広めに取る。

 個人で試して成功した技術は、他の生産者にも勧める。「研究熱心で知識量が抜群」(JA北ひびきの担当者)と頼られる存在だ。

 越冬キャベツの生産は、収穫後に長く保存する分、一般の冬キャベツよりも手間がかかる。根切りでは降雪に備えてキャベツを1玉ずつ持ち上げ、8畝分を1列にまとめる。出荷時も、重機で雪をぎりぎりまで掘るが、最後は手で取り出す。1回の出荷量は多いときで10トンほどに上ることもある。

 栽培の負担が大きく、地域の生産量は減少傾向にある。だが、川江さんは今後も面積を維持する意向だ。労働力に余裕はないが、「つらい方が農業をしている気がして好き」と笑う。農家である限り、厳しい作業も手を抜かず続ける。「おいしいと言ってくれたら、やっぱりうれしいから」。今年も極寒の畑に立つ。(石川知世)
 

経営メモ


 越冬キャベツやカボチャなど計35ヘクタールほどを妻、両親と栽培。繁忙期はパート約10人を加えて作業する。
 

私のこだわり


 「健やかな作物を育てるにはpH(水素イオン濃度)が一番大事。下(土壌)がしっかりしていれば上(作物)はついてくる」 

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