繰り返す対日圧力 陰にまた農家の不満 特別編集委員 山田優

 「ジョン・ブロック」という名前に懐かしさを感じる人は、失礼ながらお年を召した方だろう。ブロック氏は1981年から86年まで米レーガン政権の農務長官を務めた。日本の牛肉やオレンジ輸入自由化に道筋を付けたことで知られる。

 ワシントンにある彼の事務所を10月下旬に訪ね、話を聞いた。80歳を超えるが、今でも定期的にラジオで農業政策の解説を担当している。

 「なぜ、日本に強く市場開放を求めたのですか」

 「農産物価格が下がり、農家は大変な苦境にあった。必死に海外市場開拓に取り組んだよ」

 80年代は米国農業にとって戦後、最も厳しい時代だった。多くの中小農家が破産した。米国政治や社会全体にとっても、農村の疲弊は大問題となった。経済成長が続く日本は米国産農産物売り込みの標的となった。

 「対日交渉の目標は牛肉・オレンジの輸入自由化で、われわれはさまざまな手を尽くした」

 農務長官在任中に両品目は輸入自由化されなかったが、ブロック氏が辞任して数年後、目標は達成された。

 「貢献できたことを誇りに思っている。農業交渉は(完全に市場開放を勝ち取るまで)決して終わりのない過程だ。トランプ政権が行う日米交渉でも同様に進むだろう」

 30年以上も農政を見続けてきた元農務長官は、これから始まる通商交渉の場で、米国が強く日本に市場開放を迫る構図は変わらないと言い切った。

 80年代の農業不況は、カーター大統領が旧ソ連のアフガニスタン侵攻に怒り、穀物輸出を強引に禁じたことが引き金になった。大統領の愚かな選択が自国の農家を苦しめ、巡り巡って日本への圧力となった。

 今、同じような構図が生まれつつある。トランプ大統領は中国との貿易戦争を引き起こし、輸出にブレーキがかかった米国の農家は、再び不況の淵に追いやられる。農家の不満の高まりが政権を強硬な交渉姿勢へと駆り立てるのは、ブロック氏の時代に経験済みだ。

 ブロック氏には忘れられない光景がある。ワシントンに来た日本の国会議員の一人が、机をたたいて大声で抗議をしたのだ。今、机をたたきトランプ政権に食って掛かる国会議員は何人いるのだろうか。 
 

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