大詰めの水産改革 漁民納得へ論議尽くせ

 水産改革関連法案の国会審議が大詰めを迎えている。漁業権見直しを含む約70年ぶりの抜本改革だけに、拙速な決定は論外だ。漁業者の不安解消を最優先すべきである。

 水産改革を巡り、与野党の対立が続いている。改正案は現在、賛成多数で衆院を通過し参院で審議中だ。

 主要野党は3日、漁業関係者や有識者らを国会内に招き、合同ヒアリングを行った。千葉県内の漁業者は「現場への説明がない」「海のルールはみんなで相談し、納得して決めるものだ」と訴えた。参院農林水産委員会の田名部匡代筆頭理事(国民民主)は「現場の声と日本の漁業の実態を踏まえて議論すべきだ」と徹底審議を主張した。「改革ありき」ではなく、漁業者の不安に丁寧に寄り添い論議を尽くすべきだ。

 安倍晋三首相は今国会冒頭の所信表明演説で、水産の成長産業化を実現するため「70年ぶりに漁業法を抜本的に改正する」と表明。来年度概算要求で水産関連を大幅に増額した。1949年に制定された漁業法は、漁業の基本的なルールを決める。

 注目を集めているのは、与野党対立法案で、安倍政権による農業、林業に続く一連の第1次産業改革の“仕上げ”とされていることだ。先行した農政改革と同様に政府の規制改革推進会議の議論を反映させる形で進めてきた。官邸農政を主導した奥原正明前事務次官が関わっている点も関係者の関心を呼んだ。

 これまでの第1次産業の改革は、農政改革がいつの間にか農協改革にすり替わり、中央会制度の抜本見直しに続きJA全農改革に焦点が当たった。半世紀ぶりの酪農制度改革では、畜産経営安定法に位置付ける一方で、制度の根幹である指定生乳生産者団体による生乳一元集荷が廃止された。生乳流通自由化に伴い大型酪農の二股出荷など来年度以降に課題も残す。

 こうした中での水産改革である。改正案では漁業権の優先順位を廃止する。乱獲を防ぎ資源保護も強化する。

 漁業権は、養殖を中心とした沿岸漁業を営むのに必要な権利で、地域の漁業協同組合や漁業者に優先して与えてきた。漁協が適切・有効に管理していないなどの条件付きで、企業にも免許を与える。企業参入で地域活性化を狙う官邸農政の手法が踏襲されているとの見方も強い。

 先月26日の衆院農水委参考人質疑で、岸宏JF全漁連会長は「法案はあくまで骨格だ。今後とも関係者と十分協議し、浜の将来展望が開かれるようにすべきだ」と述べた。改革を前面に出したが、実際の運用は政省令に委ねられていることを踏まえた発言だ。混乱がないよう、水産現場の実態と意見を十分踏まえた改革が問われる。

 水産は、農業と同様、高齢化、後継者不足など大きな岐路に立つ。成長ばかり強調せず、持続可能な漁業経営の再構築こそが重要だ。 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは