約800年前の古典『方丈記』は優れた災害ルポでもある

 約800年前の古典『方丈記』は優れた災害ルポでもある。京の都を襲った大地震の惨禍を鴨長明はジャーナリストの目で記録した▼「山は崩れて河を埋み、海は傾きて陸地をひたせり」。さながら敏腕社会部記者の筆致である。「恐れのなかに恐るべかりけるは、ただ地震なりけり」。あらゆる災害の中で地震ほど恐ろしいものはない。名コラムニストの筆さばきで結ばれる▼地震、大火、飢餓、政変…。激動期に描かれた『方丈記』が、無常観の文学と言われるゆえんである。美しい都が一瞬にして廃虚となる。地位も財産もうたかたのように消え去る。人間の幸せとは、絶望の中でどう生き、助け合うか。その問いが、いまも重くのしかかる▼大阪大学教授で災害ボランティアの先駆者、渥美公秀さんから「被災地のリレー」という言葉を教わった。支援された人が、次の被災地を支援する。善意と助け合いの輪である。「ずっと助けられるばっかで、何とかお返ししてぇのぅと思ってたいやぁ。これでやっとね。おらほんとうれしいんだよ」。被災地で、涙ながらにそんな言葉が交わされるという▼渥美さんは、それを「恩返し」でなく「恩送り」と呼ぶ。きょうは国際ボランティアデー。困った誰かのために、バトンをつなぐ一員でありたい。
 

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