[達人列伝 71] ミカン 静岡県浜松市・河西佳宏さん(48) 葉で作る高糖度果実 樹上完熟 リスク管理徹底

ブランドミカン「心」を手にする河西さん(静岡県浜松市で)

 全国屈指のミカン産地である静岡県浜松市北区三ケ日町で、河西佳宏さん(48)は高単価・高品質にこだわったミカン生産に取り組む。JAみっかび管内の出荷組合が販売する樹上完熟早生の最高級ブランドの主力生産者の一人。「ミカンは葉で作る」をモットーに、新しい技術を積極的に取り入れるなど、気鋭の生産者として産地をけん引している。

 河西さんは、三ケ日地域の5ヘクタールで早生種の「興津早生」と普通種の「青島温州」を栽培。所属する「マルエム出荷組合」が販売するブランド「心」は、樹上完熟、マルチ被覆を前提とし、特選は糖度13という条件を設定。人気は高く、高単価で取引されている。

 一方、長期間樹上で育てることで木に負荷がかかり、隔年結果が起こりやすくなる弊害がある。凍霜害や鳥獣害に遭うリスクも高くなる。高い技術と管理が求められるため、同組合にいる約800戸の生産者でも手掛けるのは5%にも満たない。河西さんは2005年のブランド立ち上げ時から、毎年欠かさず出荷を続けている。

 祖父の代からのミカン農家に生まれ、物心ついた時には「将来はミカン農家」と決めていた。地元の農業高校、県立農林短期大学校を卒業。すぐに就農し、34歳の時に両親から経営を継承した。就農した頃は地域に空いた農地などなく、規模拡大のためにパワーショベルを購入して、山を切り開いて畑をつくったことも。

 今も和歌山県の達人の元に通って技術を教わるなど、知識や技術の向上に余念がない。

 信念は「量より質」。数や大きさより内容の充実を大切にする。その鍵を握るのは葉だ。「糖度を出すには木に負荷をかけないといけないが、限界を超えて無理に糖度を出すのは不健全。弊害も大きい」と言い切る。「葉を多く付ける健康な状態に育てることで、負荷をかけても隔年結果のない木になる。酸味も少ないものができる」と力を込める。

 最近は、河西さんを慕う地元や県内の若手農家に技術や信念を惜しみなく伝えている。

 「先輩たちにしてもらったことをしているだけ。教えることで自分の理解が深まる。それに人に畑を見せるとサボれないでしょ」と笑顔を見せる。(市来丈)
 

経営メモ


 5ヘクタールでミカンを栽培。妻と、パートタイマーを通年で4人、繁忙期に15人雇用している。4ヘクタールで「青島温州」、1ヘクタールで「興津早生」を栽培。うち25アールで樹上完熟早生「心」を生産する。
 

私のこだわり


 「同じ品質、同じ数量で毎年出すことが大切」
 

おすすめ記事

達人列伝の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは