[達人列伝 69] パクチー 佐賀県武雄市・江口竜左さん(30) 味、香り 料理人とりこ 本場の種子に独自ルート

収穫したてのパクチーを手にする江口さん(佐賀県武雄市で)

 2016年、コリアンダー(パクチー)が爆発的にヒットした。ブームの火付け役となった専門店の「パクチーハウス東京」で欠かせなかったのが、佐賀県武雄市の江口竜左さん(30)のパクチーだ。本場、タイから輸入した種子を使ったパクチーは、味も風味も本格派。東京、大阪、福岡など、全国の料理人がこぞって買い求める逸品だ。

 パクチーはハーブの一種で、魅力は鼻に抜ける鮮烈な香り。香辛料たっぷりの辛い料理に使うことが多い。香りが弱いと他の香辛料に負けてしまうが、江口さんが手掛けたものはどの料理に合わせても抜群の存在感を放つ。取引先の多くが東京、大阪など大都市のタイ・ベトナム料理店。パクチーブームの火付け役で、マニアの間では伝説的存在の「パクチーハウス東京」も今年3月に閉店するまで、達人のパクチーを使い続けた。

 料理人をとりこにする香りの秘密は、江口さんがこだわる種子にある。タイから直輸入したもので、国内で作るのは江口さんだけ。14年の同国のクーデターをきっかけに規制が厳しくなり、輸入するのが困難になっている。

 クーデター前に行った試験栽培で、本場の種子にほれ込んでいた江口さん。国際情勢が厳しい状況でも妥協せず、手に入れようと手を尽くした。

 以前通っていた種苗会社が経営する園芸専門学校の恩師を通じて、 タイの大使館に交渉。現地の種苗会社や商社にも何度も頼み込み、 独自の入手ルートをつくり上げた。

 その希少な種子をハウスと露地の両方で栽培。ハウス物は上品で柔らかいのが特徴で、サラダに向く。露地物は香りが強いため加熱用に。飲食店でどんな食べ方もできるよう、育て方を変えているのも江口さんのパクチーが重宝される理由だ。

 需要のある品目だが、産地は少ない。栽培技術が広がらないよう視察に消極的な産地もあるが、江口さんは決して技術を隠さずに、他の農家の指導さえする。「どんどん産地ができて、パクチーの裾野が広がってほしい」と全体を見渡す。一方で「どんなにまねされてもいい。品質へのこだわりは誰にも負けない」と、先駆者らしい自信ものぞかせる。(金子祥也)
 

経営メモ


 パクチーをハウスで60アール、露地で70アール作る。キュウリの栽培も手掛ける。17年度の売り上げはパクチーだけで1900万円に達した。
 

私のこだわり


 「品種も、栽培方法も、出荷形態も、売り先も、もっと農家にはいろんな選択肢があっていい」
 

おすすめ記事

達人列伝の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは