地方創生とJAの役割 雇用生む工夫凝らせ 早稲田大学公共経営大学院教授 片山善博

片山善博氏

 地方創生の眼目は、地方から多くの若者が大都市に流出して地方の活力を低下させている現状に、どうやって歯止めをかけるかということだろう。

 若者が都市に出ていくのは、地方の経済が停滞しているからだといわれる。確かに地域経済が停滞していれば、若者にとって魅力のある雇用の場はおのずと限られる。
 

稼ぎ上回る流出


 では、地域経済はなぜ停滞しているのか。有力な原因の一つとされるのが、地域からの金の大量流出である。

 地域は農産物をはじめとしてさまざまなものを生産し、それを地域外に売ることによって金を稼いでいる。ただ、その一方で地域の人々は生活や生産に必要なものを地域外から購入することを通じて金を流出させてもいる。

 稼ぎと流出とを比較して稼ぎの方が多ければ地域経済は黒字になり、逆に流出の方が多ければ赤字になる。もちろんこの計算結果は地域ごとに異なるが、多くの地域では流出の方が多くて赤字(しかも大赤字)になっている。

 この赤字は、地域経済の停滞にとどまらず地域の雇用にも深刻な打撃を与えることになる。外からものを買うと、その生産と雇用は地域外に発生することになり、それに応じて地域内の生産と雇用が減少する。地域経済の赤字は地域の雇用の減少と不足につながるわけだ。

 以上の原理が分かると、地方創生の視点がおのずと定まってくる。一つは地域にお金が入ってくるよう努めることであり、もう一つは地域からできるだけお金が出ていかないようにすることである。
 

業務になぞらえ


 この地方創生の視点をJAの業務になぞらえてみると、まずは農家の皆さんが丹精して作った農産物をできるだけ好条件で消費市場に届け、金を地域にもたらすことである。これがJAの“本業”であるはずだ。もし農産物を加工品にするなどの6次産業化によって価値を高められれば、地域にもたらされる金はより多くなる。

 一方、例えばJAが仲立ちして学校給食の食材をできるだけ地元で供給するようにすれば、生産農家を通じて地域で金が循環する。

 肥料や飼料についてJAが地域で調達してそれを農家に販売するようになれば、域外に流出する金は確実に減る。小水力発電などのローカルエネルギー開発に取り組むことによっても、金の域外流出を減らすことができる。

 JAの“副業”を点検してみても、例えばJAが葬祭事業で扱う花を地元産にすることで、地域の花き農家が潤う。JAの葬祭事業で扱う墓石をもし地元で調達できれば、それだけ地元に金が落ちる。

 JAの観光事業は組合員を域外に連れ出すだけでなく、外から観光客を招き入れるビジネスモデルを取り入れることで、地域に金を呼び込むことができる。

 もとよりそんなに簡単なことではないが、みんなが地方創生の視点を頭に入れておくことで、地域とともに歩むJAに向けた工夫や改善につながるのではないか。

<プロフィル> かたやま・よしひろ

 1951年岡山市生まれ。東京大学法学部卒、自治省に入省し、固定資産税課長などを経て鳥取県知事、総務大臣を歴任。慶応義塾大学教授を経て2017年4月から現職。『民主主義を立て直す 日本を診る2』(岩波書店)など。

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