行政へ募る不信感 「対応ひどい」「もはや1年半…疲れた」 九州北部豪雨 農地復旧事業申告漏れ問題 福岡県朝倉市

査定漏れでいまだ工事の見通しが立たない田中さん。豪雨の前は写真右半分も柿の樹園地だった(福岡県朝倉市で)

 福岡県朝倉市の九州北部豪雨被災農地の一部が、農水省の復旧事業を受けられない問題で20日、工事を断念した農地が約200件に上ることが分かった。同市の申請漏れで対象から外れ、その後の動向が焦点になっていた。市は国と同水準の補助策を設けるとしたが、災害から1年半近くたつ中、営農意欲をなくしたり、市の対応を不安視したりする農家が工事を断念したとみられる。(金子祥也)
 

独自予算で市が補助も 工事断念、 約200件


 問題が発覚したのは今年7月。九州北部豪雨は激甚災害で、農水省の農地災害復旧事業を利用すると工事費の9割超が国庫で賄われる。同市では事業を受けるため、国に提出が必要な「災害復旧事業計画概要書」で一部提出漏れが起き、本来なら補助が受けられた農地が対象外になった。同省防災課によると、他の激甚災害も含め「例がない事態」という。

 市によると、漏れたのは農地と農業用施設合わせて780件。市は代替策として独自予算で国の事業と同額を補助すると農家に伝えたが、工事の開始時期は不透明のままだった。その状況で12月までに工事発注の意思確認をしたところ、同意したのは約3割の259件にとどまった。

 自力復旧したり、耕作放棄地で要件を満たさなかったりした例も多数あったが、農地復旧を諦めたケースは108件、地権者と連絡がつかず、市の判断で対象外にした農地も数十件など、約200件の農地が豪雨の傷を抱えたままになることが確定した。

 259件の工事費用は概算で6億1070万円と巨額。同市は国や県の補助事業を使って少しでも市の負担を減らそうと取り組んでいる。

 多数の農家が復旧工事を諦めた理由に、市の対応のずさんさを指摘する声が挙がる。同市で柿を作る田中巳知嗣さん(63)は、被災から1週間で必要書類を担当課に提出したにもかかわらず、申請から漏れてしまったという。「人間だからミスをするのは仕方ないが、その後の対応がひどい」と苦言を呈する。

 この問題を市が農家に伝えたのは、7月の説明会。その日まで農家は、自分の農地が対象から外れたことさえ知らなかった。田中さんも説明会に参加し、市に窮状を訴えたが、その後は郵送で通知のはがきや工事の同意書が来ただけ。工事の実施時期や負担額など、欲しい情報の提供はなかった。「もう豪雨から1年半。期待して待つのに疲れた」とこぼす。

 地元のJA筑前あさくらは、市の発表を受け「工事を受ける農家が予想外に少ない」(災害復興対策室)と受け止める。特に連絡が取れずに対象外となった農家については「後から不満の声が出てこないか心配だ」(同室)と危惧する。 
 

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