[結んで開いて 第3部][集落営農の先に](1) 「外の力」積極登用 加工9000万円、全員活躍 岩手県遠野市

加工品作りや販路拡大に励む宮守川上流生産組合のメンバー。直売所には「一集落一農場」ののれんが掛かる(岩手県遠野市で)

 多くの集落営農が今、大きな節目を迎えている。政策的な推進から10年が過ぎ、住民や担い手の顔ぶれも変わってきた。経営の柱を増やしたり、改めて暮らしの基盤を固めたりしようと、各地で挑戦が始まっている。集落内外でのつながりが生む、新たなアイデアを見た。

 「キウイ、買い取ります」

 10月下旬、稲作地帯の岩手県遠野市の各戸に、そう呼び掛ける新聞ちらしが入った。ちらしの主は、宮守川上流生産組合。3地区のほぼ全農家、約180戸でつくる集落営農法人だ。

 キウイフルーツを出荷した菊池紀子さん(64)は「自分の家では食べきれなくて困っていた」と言う。組合のメンバーで、加工場のパート従業員でもある。キウイフルーツは、その加工場で受け入れる。「今はジュースを待ってくれているお客さんがいる」。やりがいに、声が弾む。

 トマト、山ブドウ、ブルーベリー……。2010年秋に開設した加工場で、商品化したジュースは8種類。女性や子どもに選ばれるよう、180ミリリットルの小瓶の商品もそろえた。

 特区認定によるどぶろくや、ジャムも含め、加工品の年間売り上げは当初の500万円から、8年で9000万円になった。米や大豆生産など営農部門の1億6000万円と並ぶ経営の柱だ。

 組合発足当初から掲げるのが、「一集落一農場」構想。農地を組合に任せきりにせず、誰もが生産活動に携わる。米と大豆を主体に農地120ヘクタールを引き受ける。

 稲刈りなど機械作業は組合の常雇職員が担う。組合員も草刈りなどはできるだけ自分でする。女性や高齢者が働けるよう、直売所や加工場も整備した。

 加工が伸びたきっかけは、1人の移住者だった。部門を率いる副組合長の桶田陽子さん(45)。組合が発足して11年後の、07年にメンバーに加わった。

 盛岡市出身で、北海道で普及指導員を経験。「個別の農業経営ではなく、農村の暮らしそのものを将来につなぎたい」。一集落一農場構想を掲げ、みんなが生き生きと活躍する同組合に県内の就農相談会で出合い、引き寄せられた。

 普及員としてトマト産地を担当した桶田さん。トマト栽培を計画していた同組合にとっても、望む人材だった。加工場の立ち上げ時、規格外のトマトでジュースを作る計画もあり、責任者を任された。

 昨年発売した新商品がキウイジュースだ。自家消費程度に軒先でキウイフルーツを育てる農家が地域に多いことに気付いていた桶田さん。「最近、キウイを使った加工品、目に付くよね」。加工場の休憩時間、パート従業員の地域の農家女性らが交わす何気ない会話に、商品化を思い立った。

 組合長の浅沼幸雄さん(62)は「『加工は女性の感性を生かせる』とよく聞くけど、本当にその通りだよ」と、桶田さんに信頼を寄せる。

 生産組合では、地域外出身者の雇用も積極的に進める。同組合の常雇職員16人のうち、5人が地域外出身だ。

 地域の結束をどう守り続けるか──。同組合に詳しい県中央農業改良普及センターの昆悦朗上席農業普及員は、こう指摘する。「地域にはいない知識や経験を持つ人材を受け入れる前提に、一集落一農場構想でつないできた地域のまとまりがある」。地域内で結束し、地域外の人材と手を結ぶ。地域の未来をつなぐ循環が生まれた。

 加工品の営業担当、桐田淳利さん(53)も、地域外の出身だ。旅行代理店に勤めていた頃のつながりを生かし、JR駅での催事や、土産物店などへの販路を開拓。取引先の店舗数は、およそ130カ所に倍増させた。

 「組合の仕事だと言えば、地域の誰もが気にかけてくれる。『自分たちの組織』と思える組合があるからこそ、外から来た私たちも根付くことができる」(桶田さん)。

 浅沼さんは農閑期の冬場でも、加工場では「毎月、20人くらいに給料袋を渡せるようになった」と、次世代に生きる活動に笑みがこぼれる。

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