[結んで開いて 第3部][集落営農の先に](3) 地元産野菜もっと 住民との距離縮まる 滋賀県湖南市

収穫したばかりの野菜を手に、はり営農の倉庫に集まる「野菜チーム」の黄瀬愛子さん(右)、代表の黄瀬昇さん(左)ら(滋賀県湖南市で)

 朝8時、滋賀県湖南市の農事組合法人はり営農。週に2回、倉庫が朝取り野菜の集荷場に早変わりする。

 「きれいにできとるなあ」「私の小さいわ」

 パートに向かう主婦や、手押し一輪車で高齢者が野菜を持ち寄る。にぎやかで明るい声が、通学、通勤の住民が行き交う集落に響く。

 同法人の「野菜チーム」から集まった野菜の出荷先は、複数の農産物直売所。中でもJAこうかが運営する、直売所を中心とした交流施設「ここぴあ」が2年前にできたことが、転機になった。

 同法人は、約18ヘクタールで米を中心に経営する。57戸の構成員のほとんどは兼業農家。田んぼは法人に任せる。多くが農作業するのは年に1、2回という。

 京都や大阪の市街地へ電車で約1時間かかる同市針地区。農地と住宅が混在し、子育て世代が暮らす新興住宅地もある。法人の結成から9年。農作業は効率化したものの、住民と農業の距離は少しずつ離れていった。

 このままで、集落営農は維持できるのか──。

 代表の黄瀬昇さん(68)。「おいしいものを作って売る。相手においしいと言ってもらう。それが農業の一番の楽しみ」。原点を思い起こす。楽しみを取り戻したい。組織の新たな姿を描いた。

 幅広い世代が集まる直売所は、地域の農業を住民に知ってもらう、うってつけの場所。だが、稲作地帯で野菜の生産者は多くない。直売所に出荷できる種類や量は当初、限られた。特徴のある地元産野菜をもっと出荷できないか。集落を見渡すと、自家消費用に野菜を栽培する女性らが構成員の家族にいた。

 パートとの掛け持ちで朝の時間に余裕のない主婦や、車を運転できない高齢者でも気軽に出荷できるように、直売所までの運搬などを同法人で引き受けた。徐々に参加者は増え、今では8人になった。

 新たな種類や、端境期の出荷を狙うメンバーも出てきた。機能性成分を多く含む品種を中心に栽培。年間で約40種類が棚に並ぶ。月に1度発行する「はり営農だより」では、野菜の播種(はしゅ)適期など、季節の農作業を載せる。

 年間約20種類を出荷する黄瀬愛子さん(75)。「野菜作りという共通の話題ができて、若い世代との会話が増えたわ」と笑顔だ。「車の運転はできないから。自分だけで出荷は無理ね」。集落の新たなつながりが、楽しみを生み出した。

 ここぴあ店長の小林忠さん(41)は「直売所の出荷者が高齢化し、個人の周年出荷は難しくなっている。集落営農組織が地域の野菜を集める形は、新たなモデルになる」と注目する。

 同法人は2年前、高齢で離農する養鶏場を引き継ぐチャレンジファームに出資。出荷を請け負い、障害者の就労も支援する。出荷作業が周年の仕事になれば、若い担い手の呼び水になる。新しい懸け橋になると期待する。

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