移住ライフ多業で豊か ミカン経営が軸-スダチ栽培-養鶏-古民家床張り-古本店-ゲストハウス 地域資源+好きなこと 徳島県勝浦町石川夫妻

ミカンの管理をする石川夫妻。今年は新たに6次産業化にも挑戦する(徳島県勝浦町で)

 専業ではなく、農山村の暮らしに合ったなりわいを組み合わせて生きる小さな起業家。どこかの組織や専業に依存するのではなく、ネットワークを広げることで、リスク分散にもなる。ふるさと回帰支援センターによると、小さな経済を組み合わせて生計を立てる地方移住者が目立つ。

 徳島県勝浦町の石川翔さん(29)、美緒さん(31)夫妻はミカン経営を基軸に、ゲストハウス、古本店、古民家の床張り事業、養鶏、スダチ栽培と“小さななりわい”を組み合わせて生計を立てる。一つの事業所得は小さくても、合わせれば都会で会社員をしていた頃に比べ生活水準は向上した。農地も住まいも、血縁関係のない地元農家から受け継ぎ、初期投資も抑えられた。

 2人の生計の柱はミカンで、現在の総収入は600万円。東京暮らしに比べ、家賃も交際費も大幅に減った。翔さんは「複数のなりわいを合わせれば、可処分所得は東京時代を上回る。例えば宿では客がミカンを買うようになり、全てがつながっている」と笑顔だ。今年はサウナ経営やミカンの加工品開発にも参入する。

 2016年春に会社を辞めて東京から移住。それまで2人は「プライベートはプライベート、仕事は仕事」と割り切っていたが、仕事と生活の境目がない今の暮らしが気に入っている。給料が定期的に入ってこないミカン経営は当初不安だったが、「農業はビジネスとして計算しやすく、計画的に事業運営ができる職業」(美緒さん)とメリットを感じる。

 もともと、農業は初期投資が必要で世襲の産業であると思い込み、選択肢になかった。だが、同町が作成したちらし「求む! ミカン農家の後継者」に、翔さんが心をときめかせ移住に至った。引き継いだ農家に出納帳を見せてもらい、実際に生計が成り立つか試算をした上で就農し、経営の技術や地域のルールなども教わった。

 農地も販路も今までの基盤を生かせる継業。自分の好きなことや地域の資源を生かした起業。美緒さんは「ここでは複数のなりわいを実践できる。やりたいと思ったらやれる環境が幸せ」と感じる。同じ志を持つ仲間もたくさんいるのも魅力だ。翔さんは「複数人でミカンの畑を管理する仕組みを作りたい。農業の門戸を広げていく」と見据える。

 移住相談などを担うふるさと回帰支援センターによると、地方移住者の中には、複数のなりわいを組み合わせるマルチワーカー(多業)に取り組む若者がここ数年、目立つという。同センターの嵩和雄副事務局長は「多業は、リスク分散にもネットワークの広がりにもなる」とみている。
 

おすすめ記事

地域の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは