[あしたのデッサン] メガFTA アジア核に共存めざせ

 年明けからの通商交渉は、大きな動きを見せる。世界の潮流はメガ自由貿易協定(FTA)。日本農業は自由化という“激流”にのみ込まれかねない。安倍政権は、アジアとの連携を核に、相互に利益のある共存的な通商方針に転換すべきだ。

 今年は現代史の中でどう位置付けられるのか。米中激突の中で、世界経済停滞の足音が一段と高まる。

 1929年の世界大恐慌から90年。当時のルーズベルト米大統領は、公共事業を中心にニューディール政策を打ち出し危機を脱した。30年前の89年、世界の歴史を揺さぶる事件が二つ。ドイツで東西を分断した「壁」が取り払われ、冷戦が終わりを告げる。中国では、民主化鎮圧の「戦車」が人々を押しつぶす天安門事件があった。日本では、昭和が終わり平成の始まりとも重なる。

 日本農業にとって平成の30年は市場開放、自由化の歴史そのものだ。昨年末の米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)に続き、来月には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も発効する。トランプ米大統領に翻弄(ほんろう)されかねない日米貿易協定も控える。安倍政権は万全な国内対策を約束するが、農業者の不安は高まる一方だ。

 世界貿易機関(WTO)が機能不全となる中で、複数国によるメガFTAが勢いを増す。安倍晋三首相は「この道しかない」と自由化度の高い、いわば“TPP型市場開放”路線を進む。強い、攻めの、成長産業の3点セットによる「この道」はどこに行くのか。いま一度、行く先を確かめねばなるまい。

 世界に巻き起こる市民の怒りは、グローバル経済に「ノー」を突き付ける。経済学者カール・ポランニーの著書『大転換』は自由化、自由放任の時代の終わりを理論立てた。共同体が「悪魔のひき臼」にかけられ、分断されたと分析。市場経済を国民の監視下に置く必要性を説く。英国ジャーナリストのポール・メイソンの『ポスト・キャピタリズム』は新自由主義を批判し、「良いニュースがある。残り99%が救済にやって来る」と1%の富裕層が支配する時代の終わりを見通す。

 安倍政権は元々、産業政策と中山間地などの地域政策を「両輪」とする農政を表明。だが、強い農業ばかりが前面に出て地域政策が後退し、「補助輪」化した。これでは日本農業の展望は開けない。

 米を主食とするアジアの連帯こそが今後の針路ではないか。農業団体とも連携し、東南アジア諸国などと一体となった米備蓄構想の一層の深化を目指すべきだ。国内生産を大前提とした食料安全保障の確立や食料主権を取り戻す農政が欠かせない。

 アジア共通農業政策を通じ、貿易自由化の利益を、例えば基金に積み立て地域全体の経済底上げに活用するなど、共存的な通商戦略に転換すべきだ
 

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