広がる 「ふるさと住民票」 “応援” “関わり”形に

工芸品作りを体験する参加者(福島県飯舘村で)

 住んでいなくても地域を応援する人を「住民」として登録する、「ふるさと住民票」に取り組む自治体が広がってきた。地域に関心がある人との関わりを深め、思いや知恵を地域づくりに生かす仕組み。互いに助け合い何ができるのか、地域と古里と住民との関係づくりを模索する。
 

復興へ欠かせぬ存在 福島県飯舘村


 福島県飯舘村は東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第1原子力発電所事故からの復興を応援してくれる人を、住民票という形で“見える化”しようと、2018年3月から「ふるさと住民票」の取り組みを始めた。例えば、村が企画した1泊2日のバスツアー。ふるさと住民票に登録された都市住民らが参加し、汚染土を詰めたフレコンバッグが積まれた田んぼ、各地に設置された線量計を見たり、小学校や復興拠点となる道の駅、神社を見学したりする。村唯一の飲食店「ゑびす庵」でうどん打ちを楽しむなど、ツアーの内容は多彩だ。

 神奈川県から来た安西政美さん(61)は、ふるさと住民になった理由を「離れているから、気持ちをつなげたい」と話す。

 原発事故で全村避難となった同村は、17年3月に一部地区を除いて帰村が始まり、現在の人口は958人。事故前の6分の1以下となった。村は復興計画として、村に戻る人、戻らない人、村を応援したい村外の人が一体となった「ネットワーク型の新しいむらづくり」を掲げる。

 ふるさと住民票は18年12月14日時点で279人。村の人口の4分の1を超えるまでになった。村は「ふるさと住民は、地域間の人口の奪い合いではなく、一緒に地域を応援できる仕組み」(総務課企画係)と説明する。

 菅野典雄村長は「ふるさと納税をしたり村を訪れたりと、ふるさと住民の存在は復興の力になる」と期待を込める。
 

活力育む 都会の目 香川県 三木町


 香川県三木町が2017年に始めたふるさと住民の登録者は584人。県内が215人、県外では東京都が117人、大阪府が51人。兵庫や神奈川など都市部の登録者が多い。

 都内では、町の若手職員中心のプロジェクトチームがイベントを開くなど交流活動をする。ふるさと住民の声を聞くことで、都市から見た町の魅力の発見や町づくりにつなげる狙いだ。

 ふるさと住民となった理由はさまざま。同町出身者の他、ふるさと納税をした、転勤で住んでいた、獅子舞で町を知った―などだ。イベントをきっかけに、ふるさと住民同士の自主的な交流や応援活動も始まった。担当する町土木建設課の村尾隆明係長は「一歩踏み込んで、首都圏の人と付き合うきっかけになった。対等な関係をつくり、ニーズに沿った仕組みを考えていきたい」と話す。

 定住と観光の間に位置し、多様な方法で地域と関わりを持ち続ける人は「関係人口」といわれる。ふるさと住民票は、関係人口創出方法の一つ。16年1月からいち早く取り組んだ鳥取県日野町の登録者は241人、徳島県佐那河内村は217人に上る。
 

<ことば>ふるさと住民票


 全村避難となった飯舘村の菅野村長が総務省に二重住民票を要望したことがきっかけで議論が始まり、15年8月に全国8自治体の首長らが構想を発表した。出身者やふるさと納税の寄付者らを対象に、自治体がふるさと住民カードを発行し、町づくりへの参加の機会や必要なサービスを提供し、つながりを深める仕組み。
 

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