[あしたのデッサン] 農政の針路 現場との対話こそ原点

 この国の民主主義は果たして機能しているのか。「改革」という名の下に現場の声はかき消され、押しつぶされてこなかったか。生産現場あってこそ農政は成り立つ。参議院選挙のある2019年は、民主主義の未来を占う岐路となる。

 改革の掛け声は、リクルート事件などをきっかけに政治から始まった。政治改革で照準に据えられたのは選挙制度。1選挙区から複数人を選出する中選挙区制は、候補者が政党とは別に個人の支援組織をつくるため、費用がかかり、政党間の争点を巡る選挙戦になりにくかった。このため、民意を大胆に集約する1選挙区から議員1人を選出する小選挙区なら、政治に緊張感が生まれ、政権交代が実現し二大政党による民主主義の成熟も進む、という筋書きだった。

 確かに政権交代は起きた。だが、民主党政権の誕生から、自民党による政権奪取を経て生まれたのは、首相官邸への過度な権力集中と物言わぬ自民党であり、国会の空洞化だった。

 政治改革が目指した民主主義の成熟は宙に浮き、規制改革推進会議などの首相の諮問機関が、短時間で物事を決めていくことが常態化した。官邸が各省庁の幹部人事を一元管理する内閣人事局の創設を含めて、首相への忖度(そんたく)という暗雲が永田町と霞が関を覆っていった。

 第2次安倍政権は、首相官邸への権力集中と歩調を合わせるように、農政改革の進め方も荒々しいものとなった。JAの総合事業を否定するような農協改革、種子法廃止、卸売市場法改正、米の生産調整見直しなどの改革や規制緩和を矢継ぎ早に実施した。

 同時に環太平洋連携協定(TPP)をはじめとする巨大な自由貿易協定(FTA)で、かつてない農畜産物の市場開放を推し進めた。規制緩和、市場原理の下、農政を規模拡大路線へと傾斜させ、農村にも格差と分断を持ち込んだ。結論ありきの改革が、多くの農家やJAなどの農業関係者、地方自治体関係者に疎外感をもたらした。

 農村部の根強い不満は、昨年9月の自民党総裁選で、石破茂氏が地方票の45%を獲得したことで表面化。安倍晋三首相は総裁選以降、地方の声を気に掛け、農政でも家族経営への配慮が見られるようになった。規制改革推進会議には、食品安全や農業に詳しいメンバーが新たに加わった。だが、規制改革推進会議などが農政改革の旗振り役を務める官邸主導の構図は変わっていない。

 強調したいのは、農村は大規模農家だけでは成り立たないということだ。国土の多くを条件不利な中山間地域などが占める中、現場の農家が求めるのは、大規模だけでなく中小規模が共存共栄できる政策だ。生産現場の声を生かした農政こそ、民主主義の根幹である。

 平成最後の年、この国の民主主義が健全であることを願う。

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