[あしたのデッサン] スマート農業加速 普及の鍵は費用対効果

 ロボットや人工知能(AI)などを活用したスマート農業が、普及に向けて加速する。生産ステージごとに開発が進む機器やシステムを組み合わせることで経営全体をデータ化し、分析できるようになる。農家は必要な機能と費用対効果を理解した上で、導入を判断すべきだ。

 政府は2019年度、「スマート農業加速化実証プロジェクト」として、先端技術の現地実証に乗り出す。例えば、大規模水田なら、①圃場(ほじょう)のデジタル管理②自動走行のトラクターや田植え機③遠隔操作できる水管理システム④ドローン(小型無人飛行機)による生育診断や局所的な必要最低限の農薬散布・施肥⑤刈り取った段階で10アール当たりの収量などが分かる「収量コンバイン」による作物の品質管理と翌年の土づくりへのデータ分析──という一連の仕組みを導入する。

 各段階での省力化、省コストの検証はこれまでもしてきたが、生産をトータルで把握することで必要な人員配置などが変わってくる。例えば、農機では一部で従来型が残っていると、熟練のオペレーターが必要になる。しかし、トラクターや田植え機、コンバインまで完全に自動化すれば、農業が未経験の従業員であっても規模拡大を実現できる。

 今後、導入の判断に当たって農家は経営全体を改めて見直す必要がある。どんな農業経営をしたいのか。その方向性と、それに合う機器やシステム、収益性のバランスを考えなくてはいけない。今までと全く違う考え方が必要な場面も出てくるからだ。

 酪農では搾乳ロボットが、15年度の70台から、17年度は238台と急速に普及が進んだ。大幅な省力化が期待できる。ところが、導入した農家によると「万一のためと考え、今までの手作業のミルカーを残してしまうと、ロボット導入のメリットはほぼなくなる」と話す。毎日の搾乳を規則正しく、何十年も続けてきた農家にとっては、ロボットに任せ切りにすることに不安が残ることもあるだろう。搾乳ロボットの最大のメリットは、毎日固定されていた拘束時間をなくすことにある。経営全体を考えた場合、農家の時間を拘束する手作業を残せば、結果として人的コストの増加につながる。

 政府は、18年6月に閣議決定した未来投資戦略で、25年までに「農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践する」との政策目標を掲げる。ただ、地域性や規模などが異なる農家に、どんな技術が適合するかは未知数だ。

 研究機関やメーカーが協力し、4月には農業データ連携基盤「WAGRI(ワグリ)」が本格稼働する。普及の鍵を握るのは費用対効果だ。多様な農家のデータを集積・分析することで、使い勝手のいい技術を現場に還元することが求められている。

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