[あしたのデッサン] 農業の働き方 暮らし、経営 自分流に

 女性にとって働きやすい職場とは、人生のどのステージにあっても無理をしない暮らし方を選べることだ。近年、柔軟な働き方ができる職業として農業を選び、実践する女性経営者らが出てきた。子育てと仕事の両立に苦労した経験を生かし、雇用体系をつくり上げている。そこに、あしたへのヒントがある。

 日本農業新聞女性のページ「の・えるKIRARI」は、そんな働き方を紹介してきた。

 岩手県八幡平市でリンドウを栽培する宮野亜由美さん(36)は、他業種でパート従業員として働いていた時、子どもが熱を出して休む日が続き、職場にいづらくなったという。「それなら自分で仕事をつくろう」と、農業に着目。JA新いわて八幡平花卉(かき)生産部会の支援を受けて経営を軌道に乗せ、従業員も雇用する。午前8時半から午後5時半までの好きな時間に出勤し、1日3時間以上働けばいい。

 埼玉県東松山市で梨園を経営する千葉有美子さん(49)は、雇用する10人以上のほとんどが育児中の女性と高齢者。働く時間は自己申告制で、1、2時間でも空いた時間に仕事に来られるようにした。子連れ勤務もOK。子どもは目の届く範囲でヤギや鶏と遊ばせる。草刈り用のヤギ、近所の人に卵をお裾分けするための鶏が“癒やしの空間”だけでなく、子育ての場にもなる。千葉さんは「こういうことがやりたかった」と話す。

 今、農業に新たな価値を見いだし、移住・就農する人が増えている。「家業」の継承から「職業」として選ばれる農業への変容だ。それは、暮らしや経営を自分なりにデザインできる魅力ある職業だという証しでもある。働く側も加工や食農教育、農泊(観光)、農福連携、地域づくりまで広範囲に携われる農業の懐の深さに引き付けられている。

 これからは、法人だけでなく個別経営にも「働き方の変革」を取り入れ、農業界全体で、女性や障害者、高齢者など万人が働きやすい職場環境にしていくことが重要だ。そのためには国の社会保障制度の充実と、行政・JAの支援が欠かせない。

 日本では、結婚して子どもができて仕事を辞めると、復職がしにくい。子育て中でも社会に参画し、働きたいという女性はいる。JAはこうした地域に“眠る人材”を掘り起こし、活躍のきっかけをつくる役割を担ってもらいたい。

 作った農産物をどう売るか。前職の経験を踏まえ、直売所のPOP(店内広告)作りに力を発揮したり、商品のラベルをデザインしたりして感性を生かせるチャンスは多い。

 多様な選択肢があることは、豊かで成熟した社会であることを物語る。キーワードは「多様性と持続可能性」。性差や年齢差、障害の有無などに関係なく誰もが安心して暮らすことができる、それこそが農業の魅力である。 

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