農畜産物トレンド 安定取引へ基盤強化を

 農畜産物の取引で「安定」という要素が最も重視されている。異常気象や生産基盤の弱体化で国産の供給が揺らいでいることが背景にある。メガFTA(自由貿易協定)の相次ぐ発効で安価な輸入品は従来以上に増えることから、国内産地は安定生産に注力し、強みを発揮できる環境を整えるべきだ。

 日本農業新聞がスーパーや外食、卸売業者など約150社からの回答を基にまとめた2019年農畜産物トレンド調査で、販売キーワード(複数回答)の1位は価格や数量の「安定」で44%を占めた。「気象」は前年より順位を上げて3位に入った。昨年の西日本豪雨被災地での甚大な被害に加え、40度超えの猛暑、北日本の長雨の影響などで産地は振り回されたためだ。野菜は、季節ごとに高値と安値が入れ替わる展開が続き、調達側の流通業者も苦戦を強いられた。

 一方、前年6位まで順位を上げていた「値頃感」は今年は13位まで後退。安さ以上に調達の見通しが立てられるかに実需は意識を向けていた。「食品関連企業が大規模化する中で、調達面の安定がより重要になる」(東日本の米卸)などの意見もある。米では複数年契約といった事前契約が拡大していることが、その表れだ。

 異例のトップ10入りしたのは9位となった「輸入・貿易自由化」。昨年末に環太平洋連携協定(TPP)、2月には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効するなど、かつてない農畜産物の市場開放を伴うことを注視している。

 品目ごとに見ると、関税の撤廃・大幅削減となる牛・豚肉、乳製品、ブドウやキウイフルーツなどで輸入品の扱いを増やす姿勢が鮮明となった。これら輸入品は、現地での大規模生産による販売価格の安さに加え、大量・安定流通で強みを持つ。輸出国は、生産基盤の脆弱(ぜいじゃく)化で供給力を落とす国内の隙を突こうとしている。

 そうした攻勢をはね返す上で重要なのが、2位となった「安全・安心」。4年ぶりに首位から陥落したが依然、回答が多い。国産を区別化する上でその位置付けは変わらない。

 一方、国産の“武器”である「おいしさ」は同2位から7位にダウンした。高品質のブランド農産物を売り込むにも、まとまった量がなければ売り場をつくれないとの実需からのメッセージとも受け取れる。「簡便・時短」は6位、「小容量」は8位で共に上昇した。共働き・単身世帯の増加を踏まえ、変わる生活様式への対応を進める必要もある。

 国産は、供給面への不安から食味の優位性といった本来の強みを発揮しにくい環境にある。実需との安定取引に向け、産地はTPP発効などに伴う国内対策の検証や、気候変動の影響を抑制する栽培技術の導入を進めながら、生産基盤の立て直しが求められている。 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは