低調な収入保険 加入促進へ環境整備を

 農業経営の収入減を補うため今年から新しく始まる収入保険制度の出足が鈍い。加入者は、3万5000経営体と目標の3分の1にとどまる見通し。かつてない貿易自由化を迎え、加入促進への環境整備が必要だ。

 収入保険は、経営体ごとの収入を基準とした新しい制度だ。農産物の販売価格が下がって経営体の収入が基準の9割を下回ったときに、下がった分の最大9割を補填(ほてん)する。2017年に農業保険法が成立し、19年からの実施が決まった。価格低迷が予想される国際化時代のセーフティーネットとして期待は高い。

 実施主体の全国農業共済組合連合会は、加入条件の青色申告をしている農業者の約4分の1に相当する10万経営体を目標に、普及に取り組んできた。なぜ目標を大きく下回っているのか、原因をきちんと究明し、対策を講じる必要がある。

 考えられるのは、農業者を引き付ける魅力ある保険内容になっていないことだ。米や麦、大豆の収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)、農業共済など既存の経営安定対策との選択制としたが、「既存制度を利用した方が有利」との指摘さえあった。

 生産部会単位で、指定産地が対象となる価格安定制度に入っている野菜農家からは「自分だけ収入保険に切り替えるのは難しい」との声も上がっている。

 20万経営体近くが「制度を見極めたい」として加入に慎重な姿勢を示しており、農水省は、制度を丁寧に説明するとともに加入者の動向を把握し、現場の不安や要望に応える必要がある。

 相次ぐ自然災害の対応に追われ、農業者の検討時間が十分に確保できなかったことも一因だろう。農水省は個別農家の加入期間を昨年12月末までと1カ月ほど延ばしたが、期待した成果は上がっていない。難しい事情は理解できるが、災害が相次いでいる時こそ、働き掛けが大事である。

 制度の充実には母数となる加入者を拡大する必要がある。そのためにも、青色申告者を増やすことが重要だ。徐々に増えているとはいえ、44万5000人と販売農家の3割強にとどまっている。必要な現金出納帳などを整備できない農業者も多く、支援の充実が必要だ。

 農家の高齢化と深刻な担い手不足を考えれば、収入保険に入る資格のない農業者を放置していいはずがない。実質的な「選別」とならないように、青色申告の届け出状況を早急に把握し、申告しやすい方策を練るべきである。

 昨年末に環太平洋連携協定(TPP)に続き、2月には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効する。日本農業は、かつてない貿易自由化にさらされる。

 収入保険制度が日本農業の中核を占める家族経営を支える本格的なセーフティーネットとなるよう、不断の改善を図ることが重要である。 
 

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