農水省提出法案 現場の視点を忘れるな

 農水省は1月下旬に召集される通常国会に、農地中間管理機構(農地集積バンク)関連法の改正や、ため池の防災に向けた管理・保全体制構築などの法案提出を予定する。いずれも農家の営農や暮らしに影響を与える重要法案だけに、政府・与党は現場の視点を第一に取りまとめに当たるべきだ。

 吉川貴盛農相は、年頭訓示で「現場で何が起きているのか、その目で見て、意見を吸い上げてほしい」と同省幹部らに呼び掛けた。安倍政権の農政運営は「官邸主導」とされ、現場の意向を考慮せずに改革を進めてきた経緯がある。そうした中、農相自らが「現場重視」を打ち出した。これまでの農政運営を改める年となるか。政府・与党にとって最初の正念場が通常国会である。

 その通常国会に同省は、農政改革の関連法案として、農地中間管理機構関連法の改正案を提出する方針だ。同法では2014年の施行後、5年をめどに見直すと定めていた。これを受け、政府・与党は「地域の話し合いの活性化」などを柱に据えた法改正を目指す。

 農地集積を巡っては、「23年までに全農地の8割を担い手に集積する」とした政府目標に対し、18年は55%にとどまり、機構の利用も進んでいない。こうした事態を打開するため、地域の話し合いによる集積に重点を置く方針を打ち出した。

 農地中間管理機構は、政府目標を達成するためではなく、農地の受け手を確保し、地域の農地を末永く維持するために存在していることを忘れてはならない。そもそも話し合いによる集積を重視する方針は、法施行の時点で打ち出すこともできた。実現できなかったのは、「企業参入を妨げる」として政府の規制改革会議(当時)などが反対したことが背景にあった。

 今回の法改正を機に、現場に軸足を置いた制度に改善すべきである。話し合いのきっかけづくりから始め、その後の合意形成にどうつなげるか。政府の万全の支援が必要である。

 農業用ため池の管理・保全のための法案の提出も予定する。西日本豪雨や北海道地震などでため池が決壊し、下流地域に被害が発生したことを踏まえた。管理・保全体制の整備を見据え、ため池の所有者による都道府県への届け出を義務付け、適正管理の努力義務を課すことなどが柱だ。

 ただ、高齢化が進む現場でため池所有者の適正管理をどう支えるかなど、詰めなければならない点は多い。現場に一方的に管理責任を押し付けるのではなく、行政などがどのような役割を果たすべきかなど、徹底した議論が必要である。

 農業を続ける上でため池は欠かせない。一方で、近年の自然災害でため池が決壊し、尊い命や財産が失われた。安全対策が急務となる中、農業を続ける道筋をどう描くか。現場に寄り添った制度設計が問われている。
 

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