和牛とWAGYU 米国市場は甘くない 特別編集委員 山田優

 昨年10月、米テキサス州の高級ステーキレストランを訪ねた。米国産WAGYUの他、日本の神戸肉流通促進協議会が認定した正真正銘の和牛「神戸ビーフ」を食べられることでも知られる有名店だ。

 店に肉を納めるWAGYU牧場主Gさんを 前日に取材していたこともあって、オーナーとシェフが待ち構えていた。米国で一般的なアンガス牛、WAGYU、そして日本から輸入した神戸ビーフをステーキで堪能した。

 神戸ビーフは見事な霜降りで、店独自の熟成を加えることでまったりと舌に絡みつくような味に仕立てられていた。オーナーは「米国産ではとても出ない濃厚な味。こちらでもグルメには知られるようになってきた」と胸を張った。少しうれしい。

 次いで出てきたのが米国産WAGYUのステーキ。肥育最後に少し穀物を与えるものの、基本は放牧して草で育てる。高級和牛肉と比べると、さしは粗く日本の基準で言えば高級肉とはとても呼べない。期待しないで口に入れたら、これが実にうまい。

 比較したアンガス牛のステーキよりも軟らかく、肉の味もしっかりとしている。和牛由来の肉質が関係しているのだろうか。正直、和牛の厚切りステーキは濃厚過ぎて数切れで十分だが、WAGYUの場合は箸が進むというか、フォークが進む感じだ。

 オーナーがちゃめっ気たっぷりに言う。

 「神戸ビーフは皆びっくりするよ。しかし、毎日食べるものではない。特別な日に食べる特別なごちそうだ」

 一方で、WAGYUステーキは和牛に比べ、ほどほどのさしが米国人の舌に合う。店内に飾り付けてある写真の全てが、Gさんの牧場で撮影されていることからも、オーナーのWAGYUにかける意気込みがにじみ出ていた。

 1億頭近い牛がいる米国で、数万頭のWAGYUは珍しい牛にすぎないが、着実にその評価を広げている。1970年代から正規の手続きを経て海を渡った和牛の遺伝資源が、試行錯誤を繰り返しステーキ食文化の中で独特の進化を遂げた。100%純血と長期間の穀物肥育を求める和牛と異なり、米国市場にぴったりな高級ビーフとしての地位を築き上げた。

 米国で人気が高まっているのはWAGYUであって、和牛では ない。食後のデザートは思いっきり甘かったが、「ホンモノの和牛肉を輸出すれば WAGYUを駆逐できる」という甘い話ではないことはよく分かった。 
 

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