輸入牛肉規制緩和 なぜ今か 国民に説明を

 輸入牛肉の安全規制が相次いで緩和される。食品安全委員会は15日、牛海綿状脳症(BSE)対策で米国産牛肉の月齢規制撤廃を厚生労働相に答申した。1996年から禁止していた英国からの牛肉輸入も条件付きで再開した。なぜ、この時期に規制を緩和するのか。安全性は確保されているのか。政府は国民に説明する責任がある。

 相次ぐ輸入牛肉の規制緩和は、安倍晋三首相の外交上の“手土産”となっている。厚労省が、BSE対策で禁止していた英国産牛肉の輸入手続きを再開したのは、安倍首相の英国訪問前日の今月9日。訪英は英国に2国間の自由貿易協定(FTA)交渉と環太平洋連携協定(TPP)加盟を促すためで、有利に交渉を進めたい意図がうかがえる。

 英国といえば86年に世界初の感染牛が確認され、92年には約3万7000頭が検査で陽性となった。BSEとの関係が指摘される変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者は96年に確認されて以来、欧州を中心に208人に上った。

 ただ、原因となる肉骨粉の使用禁止でBSE発生は激減したとして、厚労省は2017年に輸入再開に向けた安全性評価を食品安全委員会に諮問。同委員会は18年2月に「月齢制限を設け、特定部位を除去すれば、人への健康影響は無視できる」と答申した。だが、その英国で同年10月、約10年ぶりにBSE(定型)が再発した。

 今春にも予定される米国との貿易協定交渉も同様だ。米国では17年に11歳、18年に6歳の牛でBSE(いずれも非定型)が発生。感染源は「不明または調査中、突然変異」としている。それでも日本は輸入月齢制限の撤廃に踏み切る。昨年末に一般からの意見募集を終え、食品安全委員会が答申した。

 日本がTPPに参加を表明した13年も、BSE検査を実施する月齢を30カ月齢から48カ月齢に引き上げた経緯がある。事実上の参加条件として米国が求めていたためだ。

 消費者は、こうした動きを不安視している。日本消費者連盟は「米国政府・産業界の圧力に屈した政治的な決定」として月齢撤廃に反対を表明。「飼料規制や検査体制、特定部位の除去がずさん」と指摘、成長を促進する肥育ホルモン剤使用についても「効率を優先し、安全性が二の次になっている」(天笠啓祐共同代表)と問題視する。

 違うリスクを指摘する識者もいる。農畜産物流通コンサルタントの山本謙治氏は「月齢撤廃でおいしい肉が一気に入ってくる恐れがある」とみる。「若齢牛の肉より5、6産した経産牛の肉の方が、海外では香りが良くおいしいと評価されている」とし、脂肪交雑(BMS)を主体とした和牛生産にも影響が及ぶのではないかと懸念する。

 規制緩和の影響は多岐にわたる。政府は早急に国民の不安を取り除くべきである。

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