農協合併の在り方 望ましい規模 精査を 福井県立大学教授 北川太一

北川太一氏

 近年、県レベルにおいて、農協の広域合併構想を策定する動きが進んでいる。そこでは県1JAも含めて、既存の広域合併農協を再合併しようとする点に特徴があり、農業者の所得増大などを目的とする「自己改革」実現に向けた組織整備の一環として、農協合併が位置付けられている。

 ところで、戦後農協の歴史は、農協合併の歴史であるとも言われるが、それは各時代が抱えていた農協運動の課題と関連付けて捉えることができ、おおよそ四つの時期に区分できよう。
 

運動課題と関連


 第1期は、1950年代から60年代にかけての経営不振対策としての農協合併であり、「整促法」の下で行政による合併の推進が強力に行われた時期である。

 第2期は、主に70年代、広域営農団地の確立を目的とした農協合併であり、農協が中心となって農業の生産振興と販売機能の発揮を目指した時期である。

 第3期は、80年代半ばから90年代にかけて、金融自由化を間近に控えた対応を行うために農協合併が進められた時期である。

 第4期は、90年代半ば以降、系統3段階制の見直し・再編を視野に入れた農協合併が行われた時期であり、それまで連合会組織に依存してきた機能を広域合併農協自らが担い得る体制の確立が目指された。

 そもそも農協の合併は、大規模経済の有利性を発揮し、事業を効率よく実施するための「適正規模」をどう考えるかという問題であった。例えば、第2期は、単に経営不振から脱却するために小規模農協を解消することを目的とした合併ではなく、農産物の集出荷体制を整備し、市場で有利販売を行うにふさわしい農協として、1市から数市町村の組織規模が想定された。

 また第3期においては、金融自由化に対応できる事業を展開するために、正組合員戸数や貯金残高の指標で望ましい規模が示され、当時の市と郡の数も考慮した「全国1000農協構想」が提起された。
 

「組織力」も考慮


 言うまでもなく総合農協は複数の事業を営むため、一つの事業に基づいて農協の規模を決定することはできない。また、大規模経済の有利性だけではなく、協同組合固有の強みである「組織力」を考慮することも必要であろう。

 第5期の農協合併時代を迎えた今、重要なことは、組織として集約すべき部分(ハード、専門性)と地域性を尊重すべき部分(ソフト、総合性)とを組み合わせることである。

 そのためには、いま一度事業や活動の内容ごとに望ましい大きさについて精査し、それにふさわしい規模の設定と人材も含めた経営資源の配置を行うことが必要だ。広域合併によって組織規模が大きくなった農協においても、支店などで組合員の前面に立つ職員は、極めて重要な存在である。
 

<プロフィル>きたがわ・たいち


 1959年、兵庫県生まれ。鳥取大学助手、京都府立大学講師などを経て現職。地域農林経済学会会長、日本協同組合学会副会長も務める。主な著書に『新時代の地域協同組合』『協同組合の源流と未来』などがある。 
 

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