地方創生「総合戦略」77%が委託 “現場発”どこに? 外注先は東京集中

米粉のデザインを紹介する長瀬さん(右)と村の担当者。地方版総合戦略の策定をきっかけに地域おこし協力隊を導入した(福岡県赤村で)

 安倍政権の「地方創生」政策が来年度で一区切りを迎え、次期計画策定に向けて政府や自治体が動きだす。ただ、地方創生の基盤となった地方独自の計画「地方版総合戦略」の8割が、都会のコンサルティング企業などに外部委託して策定されていたことが専門機関の調査で明らかになった。農家ら住民の声を生かす“現場発の地方創生”に向けた仕組みを求める声が上がる。
 

第2期へ自治体に負担感


 地方創生政策は、人口減少や地域経済の縮小に対し、「まち」「ひと」「しごと」を柱に数値目標を掲げて2015年度から始まった。自治体は今後5年の政策目標や施策の基本方向を盛り込んだ地方版総合戦略を策定。国は、戦略策定などに1市区町村当たり1000万円超を交付した。

 地域の将来設計を描く総合戦略だが、地方自治総合研究所が18年に公表した調査結果では、回答した1342市町村のうち77%がコンサルタントなど外部に策定を委託したことが判明。「事務量軽減」「専門知識を補う」が主な理由で、外注先は東京都内に本社を置く企業に集中していた。把握できた598市町村の外部委託料は40億円を超した。

 同研究所は「形式的に作った自治体が多い」と問題提起する。

 20年度は新たな「地方創生」政策に入ることから、内閣官房は1月28日、第1期の総合戦略に関する検証会を発足させ、第2期に向けた目標設定の在り方などを議論した。来年度は、国も自治体も5年間の検証と戦略の見直しをする年になる。

 ただ、地方自治体にとって新たな策定は重い負担だ。「住民の声を反映させた戦略が理想だが、通常業務もありコンサルに任せざるを得ない」(関東の自治体)、「前回は国からの指示でJAや銀行に会議に入ってもらい議論して作ったが、次はできるだけ簡素化させたい」(関東甲信の自治体)などの声が上がる。
 

福岡県赤村 議論重ね“おらが政策”に


 人口3000人の福岡県赤村。15年に国に提出した地方版総合戦略は、農家や子育て中の女性ら住民によるワークショップを重ね、村の強みや弱みを議論した上で作り出した。農業や観光など各部門の課題を洗い出したことから、ワークショップに参加した農家の男性は「村の農業政策に当事者意識が持てるようになった」と感じる。

 認定農業者の増加や子育て支援の充実など、他の自治体も設ける目標から、大学との連携による新規ビジネス立ち上げなど独自の目標も多く設けた。戦略をきっかけに、地域おこし協力隊も導入。現在は村の農作物を販売する特産物センターの売り上げ向上やトロッコ列車など、観光分野の新規事業に着手している。

 担当した同村政策推進室の松本優一郎係長は「認定農業者数など目標達成が非常に厳しい分野もあるが、目標は村で積み上げた数字で、作成までのプロセスに意味があったと思う」と話す。

 来年度の策定と検証を控える同村。およそ50人の役場の正職員での見直しや検証の事務負担はあるが、同村は「住民の声をまた何らかの形で反映させたい」(政策推進室)考えだ。米粉の商品化などを進める協力隊の長瀬加菜さん(39)は「再び戦略を作るなら、私も関わってみんなと話し合いたい」と意欲的だ。

 ただ、同村のように住民を交えたワークショップで作り上げた地方版総合戦略を策定した自治体はわずか。もともと各自治体は同戦略とは別に総合計画を立てている。外部委託せずに市職員が戦略を作った西日本の自治体は「次期はコンサルに任せないと負担が重い。総合計画があるのに、戦略を作る意味もよく分からない」と本音を明かす。
 

自発性促す仕組みを

 

 地方自治総合研究所の今井照主任研究員の話


 地方のための税金が、結果として東京の企業の利益になってしまった。地方版総合戦略の策定は、国が時間を区切り市町村を上から評価し、市町村の自発性が生かされなかった。国が自治体を審査するような現状の地方創生の仕組みは改めるべきだ。計画を作るのなら、例えば小学校区など地域の単位で住民が議論して積み上げるような仕組みが必要だ。農家も声を上げてほしい。
 

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