二大協定の発効 支援十分か徹底検証を

 欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が1日、発効した。昨年末の環太平洋連携協定(TPP)に続いて、日本農業は過去最大級の自由化にさらされる。二大通商協定が動きだす中、農家への支援は本当に十分なのか。通常国会で徹底検証するべきだ。

 日欧EPAで日本は8割を超える品目で関税を撤廃する。ソフトチーズなどTPPを超える市場開放に踏み切る品目もある。ワインは関税が即時撤廃される。欧州産チーズやワインは日本でもブランドが確立されているだけに、日欧EPA発効で国産材料を使ったチーズ製造や日本ワインなど各地で進む産地化の動きに水を差しかねない。

 政府の役割は、自由化の中でも国内の農家が意欲を持って農業を続けられるよう後押しすることである。加工施設の整備など各種対策が講じられてはいるが、大規模経営だけでなく、中小の家族経営を含めた多様な農家に行き届く支援でなければならない。国内対策の入念な検証が必要なのにもかかわらず、協定を承認した先の臨時国会の実質審議は、衆参両院合わせてわずか9時間。議論は深まらなかった。

 国内ではEPA発効を見据え欧州産品の販売攻勢が活発になっている。EU産ワインの値下げも相次ぐ。今後、幅広い品目でそうした安値販売が展開されれば国産を脅かす恐れがある。

 昨年末に発効したTPPでは、牛肉の関税引き下げを背景に参加国からの牛肉輸入が急増している。財務省によると、参加国からの1月上・中旬の累計輸入量は2万4000トンを超え、前年同月の1カ月分を14%上回った。

 懸念は輸入量の増加だけではない。輸入急増時に発動する牛肉のセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)の基準数量が米国を含む水準のままで、機能しない状態にある。基準数量の見直しが必要だが、再協議の動きはない。

 TPPと日欧EPAという大型通商協定が連続して発効したということは、牛肉やチーズ、ワインなど多くの品目が海外からの攻勢にさらされ、日本農業が未知の境遇に突き進むことを意味する。だからこそ、両協定の発効を決断した安倍政権は、生産現場の不安を払拭(ふっしょく)する責任がある。

 通常国会冒頭、安倍晋三首相は「農家の不安にしっかり向き合う」と言った。だが、SGの見直しを含め国内対策に消極的なままでは、現場の不安は到底解消できまい。「若者が夢や希望を持って飛び込んでいける強い農業を創る」とも述べたが、大規模偏重施策では、一部地域にしか担い手が育たない。

 食料自給率が低迷する中、規模の大小を問わず幅広い層が安心して農業を続けていける施策が必要だ。政府・与党、野党は二大通商協定に対し、現場が将来像を描けるよう危機感を持って論戦を展開するべきである。

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