[メガFTA] 日欧EPA 止まらぬ市場開放 生き残りへ正念場

写真左から▶米価の下落を懸念する大友さん(宮城県名取市で)▶稲わらは全て地元農家から仕入れたものを使う茶野さん(滋賀県近江八幡市で)▶液状飼料を使う小林さん(広島県福山市で)

 日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が1日、発効した。昨年末の環太平洋連携協定(TPP)に続く大型通商協定を受け入れた日本。今後は、米国との貿易協定交渉も控える。かつてない水準の農産物の市場開放時代を迎えた今、若手、中堅の農家は何を思い、どう立ち向かうのか。現場の声を聞いた。
 

地産地消 魅力伝え


 農事組合法人U.M.A.S.I.(うまし)理事、大友寛志さん(41)=宮城県名取市、水稲70ヘクタール、大豆51ヘクタール

 大友さんは、需要が高まる業務用米の生産に力を入れてきただけに「大型経済連携により、中食や外食を中心に安価な外国産米に置き換わり、米価の下落につながってしまわないか」と不安視する。政府には、米価安定への後押しを求める。

 同時に「自由貿易協定に関する情報は隠さず、積極的に細かく開示してほしい。合意後に、日本に不利な形で変更することはないようにしてもらいたい」と念を押す。

 大友さんが所属する同法人は、津波被害を受けた同市植松地区の農業を維持するため、2016年度に設立。30~60代の社員10人で活動する。高齢のため引退する地区内外の農家から毎年、農地を10ヘクタール程度引き受ける。今後も地域農業が持続するためには、米価が安定し、法人経営が軌道に乗ることが不可欠だ。

 国内の消費者や実需者の多様なニーズを踏まえた生産を重視する大友さん。19年度からは、18年度に本格デビューした県の水稲新品種「だて正夢」の栽培を新たに2ヘクタールで始める。「地産地消や米を含めた国産農産物の魅力を周りにもっと伝えていきたい」と強調する。
 

顔見える 関係強化


 JAグリーン近江F1委員会副委員長・茶野朋和さん(44)=滋賀県近江八幡市、交雑牛160頭

 オーストラリア産などを中心に、既に安価な輸入品の攻勢が強まっている牛肉。交雑種(F1)160頭を飼養する茶野さんは、これまでにない大幅な市場開放時代を生き抜く戦略を、売り先や消費者との関係強化に見いだす。「価格だけでなく、おいしさや地元産であることの価値を、消費者に直接伝えていくことが、今後さらに重要になる」と力を込める。

 茶野さんが副委員長を務めるJAグリーン近江F1委員会では、年間約900頭を、県内を中心にスーパーなどを展開する平和堂の独自ブランド「あじわい牛」として出荷する。産地と売り先の「顔の見える」関係づくりを強化し、安さを売りにする輸入品との差別化を図ってきた。

 店頭では、半値近い輸入品と「あじわい牛」が同じ棚に並ぶ。付加価値をアピールするため、同委員会では若手を中心に、年2、3回売り場での販促活動を続けている。茶野さんは「今は地元産を選んでくれている消費者も、安い輸入品に流れてしまう可能性はある。『いつも買(こ)うてるよ』と言ってくれる人のためにも、おいしい牛を育て、ファンをがっちりつかんでいかないといけない」と先を見据える。
 

品質高め 差別化へ


 日本畜産瀬戸牧場牧場長・小林太一さん(34)=広島県福山市、養豚・母豚300頭、肉豚出荷年間4500頭

 養豚経営の3代目として働く小林さんは「今でも輸入豚肉は値段が安い。国産の売り場がなくならないか、脅威だ」と、一層の価格低下に危機感を募らせる。

 同社は豊かな食を提供しようと、食品残さを使ったリキッドフィード(液状飼料)を給餌。管理は開放型豚舎で、豚のストレスを抑えることで良質な豚肉を生産している。鮮度、品質に自信を持つが、「輸入豚肉も品質は高い」と警戒している。

 「畜産業をなくしてはいけない」と、マイナスイメージを変え、若者を呼び込もうと、働きやすい環境づくりに向けて奮闘する。液状飼料で腸内環境を良くすることで、ふんの臭いを抑える。豚舎にバークを敷き詰めてさらに臭いを軽減。20代の社員を3人雇い、4月には高卒の社員が加わる見込みだ。

 加工品や総菜の販売も手掛けるが、増える中食需要を見据え、国を挙げた6次産業化の推進の強化を要望する。輸入との差別化へ、脂肪交雑基準(PMS)判定の活用も検討している。「自社銘柄の『瀬戸のもち豚』を誰もが知っているブランドにしたい」と意気込む。

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