[達人列伝](79) ナス 福岡県八女市・真鍋春二三さん(72) 日誌50年 蓄積自信に 適期作業で出荷一番乗り

半世紀続く日誌をナス栽培に生かす真鍋さん(福岡県八女市で)

 福岡県八女市に、半世紀以上にわたって蓄積し続けた“ビッグデータ”を活用する、ナス栽培の達人がいる。真鍋春二三さん(72)だ。10代の頃から毎日欠かさず記録している日誌を基に、当日の作業の段取りをし、適期作業を進める。思わぬトラブルが生じても、過去の記述を判断のよりどころとし、自信を持って適切な作業を進める。蓄積した資料に裏付けられた、高品質なナスが自慢だ。

 市販の大学ノートを使い、一日一日の天気や作業内容を記録する。1ページを4等分し、4年間の同じ日付を同じページで確認できるようにしている。例えば、2月4日のページでは、4年分の2月4日の状況が一目瞭然。何時から何をしたか、どのくらい収穫したか──などが分かる。その他、定植した時期や暖房を入れた時期なども読み取れる。

 農業は天候との勝負。その日の天気次第で作業が後手に回りがちだ。真鍋さんは、現状と日誌とを照らし合わせ、生育の進み具合を判断する。天候を考慮しながら当日や先の仕事を考え、必要な時期に必要な作業を進める。「以前はどうしていたか見返すことで、行き当たりばったりではなく、先を見越して動けるようになった」と強調する。

 日誌が役立った例は多い。JAふくおか八女なす部会で長く役員を務めた真鍋さん。会議や出張などで多忙を極めたが、前年までの状況を基に事前に作業計画を調整し、妻の手を借りながら適期作業を実現してきた。

 ナスの病気など、予期せぬ異変時も日誌が生きる。「何かおかしいと感じた時、昔の日誌に書いてあることが参考になる。翌年以降は予防できるようになる」。蓄積した資料と経験に学び、失敗を繰り返さない。

 JA園芸指導課の平島正一課長代理は「これほど長く継続して記録を残している人はいない」と強調。「出荷はいつも一番乗り。日誌を基にした段取りのうまさが、仕事の速さに表れている」と太鼓判を押す。

 長年積み重ねた日誌は30冊を超えた。継続する力が達人たるゆえんだ。「原動力はやっぱり、これだね」。杯を傾けるしぐさを見せて笑う真鍋さん。今日も日誌に向かう。(松本大輔)
 

経営メモ


 ハウス約20アールで冬春時期に「PC筑陽」を栽培。JAふくおか八女なす部会で約20年、部会長を務めた。県の立毛品評会でトップに立ったこともある。
 

私のこだわり


 「やる気と元気がモットー。酔って帰っても二日酔いでも、欠かさずその日の作業を記録する」 
 

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