国会論戦本格化 農の未来像 現場に示せ

 4日から通常国会の予算委員会が始まり、論戦が本格化してきた。安倍晋三首相が語ってきた「事実に基づく丁寧な説明」とは程遠い。厚生労働省による毎月勤労統計の不正調査問題では、事実究明に後ろ向きな政府の姿勢が鮮明になっている。国会は、政治家が国民に語り掛ける場であることを忘れるべきではない。

 毎月勤労統計の不正調査問題を巡り、野党は予算委に先立つ理事会で厚労省の前政策統括官の参考人招致を要求した。だが与党は拒否。安倍首相も招致の是非について「お答えのしようがない」とはぐらかした。政府・与党は、7日までに2018年度第2次補正予算案を成立させ、8日から19年度予算案の実質審議入りを目指すが、事実の究明をうやむやにしたまま審議入りを急ぐべきではない。

 農業、農村は重大な局面を迎えている。かつてない農畜産物の自由化を行う環太平洋連携協定(TPP)、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が相次いで発効し、農家は今後の経営に不安を抱いている。さらに日米貿易協定で、トランプ大統領が強硬に圧力をかけてくるのは間違いない。

 12年12月の第2次安倍内閣発足以降、安倍首相は成長戦略の“一丁目一番地”として農業の規制改革を断行し、農協組織の在り方にメスを入れ、米の生産調整なども見直した。官邸主導で強引に改革を進めたことで先行きが見えず、現場は混乱している。

 農林中金総合研究所は、政府の「農業競争力強化プログラム」に基づく農業改革関連法の運用状況を検証し、業界再編は必ずしも農家の所得向上につながっていないと断じた。

 メガFTA(自由貿易協定)の時代に農家や産地はどう立ち向かえばいいのか。規模拡大や競争力強化に傾斜した農政をどう軌道修正すべきか。生産基盤の弱体化をどう克服し、低迷する食料自給率を高める道筋をどう描くのか──。国会の場で説明する責任がある。

 本来なら、農政検証の場となる食料・農業・農村基本計画の見直しが始まっている頃だ。1月末に農相が有識者らでつくる審議会に諮問し、約1年かけて議論するのが通例だった。だが農水省は議論の開始を今秋に先送りし、農家らの意見聴取を先に始めることとした。異例の段取りとも言える。

 安倍首相は、今国会の施政方針演説で「平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を共に切り開いていこう」と語った。それならば基本計画見直しを農政の主テーマに掲げ、与野党が論戦を繰り広げるべきだ。

 春には統一地方選、夏に参院選がある。衆院選もあるかもしれない。高齢化に伴う労力不足に加え、未曽有の災害や貿易自由化が農家を直撃している。安倍首相はじめ与野党の議員は、審議を通じて農の未来像を示すことが必要だ。 
 

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