終わったはずの戦争がもう一度始まった

 終わったはずの戦争がもう一度始まった。『終わらざる夏』(浅田次郎著)は、千島列島北東端の「占守島(しゅむしゅとう)の戦い」を人間ドラマとともに描く▼それは1945年8月中旬、日本が敗戦を受け入れたポツダム宣言受諾後に起きた。日ソ中立条約を一方的に破棄し、ソ連赤軍(当時)の戦車部隊などが総攻撃を開始。北の守りについていた武装解除中の日本帝国陸軍の精鋭部隊が迎え撃つ。激しい抵抗もむなしく、結局、北方四島はロシアの実効支配が続く▼あすは「北方領土の日」。幕末の安政元年、両国の国境を取り決め日露和親条約を結んだ時にちなむ。日本が現在、歯舞群島と色丹島に限る事実上の2島返還論に転じても、領土交渉は遅々として進まない。したたかなロシアが相手である。一時盛り上がった期待は、一挙にしぼむ▼両国関係には複雑な歴史の糸が絡み合う。日本は日露戦争の薄氷の勝利を経て列強に仲間入りした。だがその後、無謀な膨張主義を突き進む。北方領土問題は先の大戦末期に米英ソ3カ国のヤルタ協定に基づく。ソ連が参戦し、千島列島を占拠したことに端を発する▼プーチン大統領は柔道六段の達者で総本山・講道館を何度も訪ねた。安倍首相には領土返還の実現へ“技あり”に持ち込む知恵が問われている。 
 

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