豚コレラ拡大 官民挙げて封じ込めを

 最大級の警戒が必要だ。岐阜県に端を発した豚コレラは5府県に拡大し、養豚農家は危機的な状況を迎えている。感染源となる野生のイノシシを近づけないために、電気柵の確認や捕獲の強化など官民挙げた封じ込めが必須である。

 一般的に豚コレラに感染したイノシシは、発症して5日ほどで死ぬ。だが、今回のウイルスは弱毒性で、感染しても症状が現れるまでに10日ほどかかり1カ月程度は生存できる。その間にウイルスが各地にばらまかれてしまった。

 家畜伝染病に詳しい東京農工大学農学部の白井淳資教授によると、1972年に国内で発生した際の「神奈川株」と同程度の弱毒性という。「岐阜県内には中国人が多く、中国から違法に持ち込んだ感染した肉の残さを夜行性のイノシシが食べた可能性がある」とみる。イノシシの出産期と、春節で海外から観光客が多く訪れる時期が重なり、厳重警戒が必要だ。

 まず電気柵の確認から始めてほしい。岐阜県豚コレラ有識者会議によると電気柵やワイヤメッシュの設置が不完全で、豚舎内や飼料置き場に野鳥や小動物の侵入が認められた農場があった。農場での防疫とは違い、野生のイノシシに対する国の対策マニュアルがなく、手探りの状況が続いている。

 電気柵を扱うサージミヤワキの宮脇豊社長によると、侵入を防ぐには地上から20センチにワイヤを張ることが鍵という。飛び越えるのを恐れて高く張っているケースが多いが、「鼻先が触れるよう地をはうような高さに設置することが大事」と指摘する。草に触れやすいため、漏電しても電気を流せるエネルギー出力が大きいタイプが良く、豚舎の場合は柵を4、5段とし、ワイヤの強度を高める必要がある。イノシシは体をさらすのが苦手のため、くぼ地をなくし、柵の外側の草も刈り取って寄せ付けないことが肝心だ。

 豚コレラは空気感染はせず、経口と接触によって広がる。白井教授によると対策は二つ。一つはイノシシと豚との接触を絶対に避けること。電気柵の適切な設置に加え、生息数を減らすための捕獲強化も求められる。

 二つ目は感染がさらに広がった場合の対応だ。「これ以上広がれば、養豚経営は成り立たない。緊急ワクチンを使うことも視野に入れるべきだ。一斉に接種し、出なくなったらワクチンをやめて清浄国になった経緯がある」と提起する。

 風評被害を防ぐことも肝要だ。豚コレラは豚やイノシシの病気であり、人に感染することはない。感染した豚の肉が市場に出回ることはなく、仮に食べても影響はないことを、業界挙げて発信すべきである。

 豚コレラに加え、アフリカ豚コレラまで侵入したら日本の養豚は壊滅的な打撃となる。防疫対策を全国で徹底し、何としても拡大を食い止めなくてはならない。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは