米大統領教書演説 対日強硬姿勢に備えよ

 米国議会でのトランプ大統領の一般教書演説は一見、融和と協調の姿勢が強調されている。だが、注視すべきは通商交渉の行方で、関税の大統領権限強化に触れた。日米協議に言及しなかったとはいえ、農産物の市場開放を含めた今後の厳しい対日交渉に備えるべきだ。

 演説内容を額面通りには受け取れない。1年前、一般教書演説では深入りしなかった通商問題を、直後に激しく動かしたからだ。制裁関税を“武器”に「ディール(取引)外交」を展開したことは記憶に新しい。

 今回も「過去何十年にもわたる破滅的な通商政策を転換しなければならない」と強調した。まずは、米中通商協議の行方だ。期限の3月1日まで3週間余り。2月下旬の米朝首脳会談と絡め、中国の習近平国家主席と首脳会談を行う可能性も高い。ただ、一時休戦が成立しても、安全保障を絡めた経済覇権争いは収まらない。長期戦となるだろう。

 通商政策で注意したいのは、演説の中で新法に言及した点だ。「互恵貿易法案」とも言うべき通商関連法案で、関税の決定権を全て大統領に移管する強硬策である。トランプ氏は米国の貿易赤字を諸悪の根源と見て、これを削減し、解消する手段として制裁関税の威力を強調している。

 米中協議が一定に妥結すれば、次は対日交渉に焦点が移る。トランプ外交は“トップ決断”が特色で、訪日の機会は5月から6月にかけて2度あるとみられる。

 一つは5月の新天皇即位での国賓としての招待。いま一つは、日本が議長国となる6月下旬の主要20カ国・地域(G20)首脳会議の時である。事前には、水面下も含め日米の通商閣僚による協議があるだろう。

 トランプ氏の全ての関心は、来年11月の次期大統領選にある。支持を得るための国民的関心事は何か。「トランプ・カレンダー」と言われる政治日程のスケジュールは、大統領選から逆算して具体的に書き込まれている。この「トランプ・カレンダー」に照らせば、来年初頭には再選のかかった大統領選が事実上動きだす。

 トランプ氏が日米貿易協定の交渉成果を有権者にアピールするには、今年中に議会の批准を終える必要がある。逆算すれば7月末までに合意、署名を目指すとの見方も出ている。

 一方、安倍政権は今後の政局を左右する参院選を控えており、いずれにしても、6月から7月にかけてが交渉の大きなヤマ場となる。

 相次ぐ自由化で、国内農業の生産基盤は一層の弱体化が懸念される。食料自給率は38%と危機的な状況だ。安倍晋三首相は、日米協議で国内農業生産に打撃を与える一切の妥協を排すべきだ。拙速な判断は、農業者の不安を増幅させ、今後の選挙にも重大な影響を与えることを肝に銘じるべきだ。
 

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