二人三脚 豪雨禍乗り越え 地鶏肉加工所来月完成へ 過疎集落住民23人 「ジロー」で守る 「ここで生きる」決意新た 高知県安芸市 小松さん夫妻

憩の家で客に土佐ジロー料理を振る舞う圭子さん(左から2人目)と、靖一さん(同3人目)(高知県安芸市で)

 住民23人の高知県安芸市の山あいの集落・畑山で、地鶏「土佐ジロー」の新たな食肉加工所が来月に稼働する。小松圭子さん(35)が代表を務め、夫の靖一さん(60)と経営してきたが、念願の加工所建設に向けて動きだした矢先、西日本豪雨が襲った。集落に続く唯一の道路が土砂崩れや崩落で寸断するなど深刻な被害に遭った。多くの人の支えとともに、夫婦二人三脚で未来を描く。

 かつては800人が暮らす集落だったが、人口は激減。急峻(きゅうしゅん)な山あいに位置し、市街地からは車で40分ほどかかり、携帯電話の電波も1社を除き、届かない。圭子さんは「過疎地の最先端」と表現する。

 集落に生きる場所を求めて2010年、「土佐ジロー」を飼養する地元の農家、靖一さんと結婚した圭子さん。「1000年続いた村を、消滅させてしまって良いのか」と、2人の子どもを育てながら、はたやま夢楽の代表として奮闘。土佐ジローの飼養、加工・販売、ユズの栽培に加え、行政から指定管理を受ける温泉宿、食堂「はたやま憩(いこい)の家」の運営と、なりわいづくりに汗を流してきた。今では全国から土佐ジローの味を求めて集落に年間3000人が訪れる。

 自然豊かな山里の暮らしには、同時に厳しさも付きまとう。市の指定管理者として運営してきた土佐ジローの加工場が、18年度中に取り壊されることが決定。昨年6月中旬から、新施設建設費用の一部をクラウドファンディング(CF)で集めている最中、西日本豪雨が集落を襲った。

 集落に続く唯一の道路は土砂崩れや崩落で寸断。電話も通じず孤立した集落で、圭子さんと子ども、集落の住民は自衛隊のヘリコプターで救助された。靖一さんたちは土佐ジローの管理や住民の安否確認に駆け回り、道路は住民が自力で直した。そんな集落の姿に、圭子さんは「集落で生きるそれぞれが、生きる知恵を発揮した。ここで生きていきたいと改めて思った」と振り返る。

 CFでは、全国の400人から温かい言葉とともに847万円が集まった。「私たちの活動への通知表のようなものに思える」と圭子さん。

 小松さん夫妻の存在が、同じく中山間地での暮らしを模索する人の励みになっている。同県いの町から、はたやま憩の家を訪れた植田英さん(71)と尾崎敏明さん(64)。植田さんは高知市からいの町に移住し、もち米復活へ、同町にUターンした尾崎さんは地域の猟友会や仲間と地域づくりの方策を探っている。植田さんは「地域おこしは賛同が得られずに心が折れることがある。そんな時、小松さんの所に行くと元気をもらえる」と話す。

 圭子さんはインターネット交流サイト(SNS)や、講演などを通じて「田舎でそれぞれの価値観が生かされる生き方」を発信する。そのためにも「なりわいを築くことが重要だ」と言う。

 靖一さんは「地域おこしはイベントやハレの日をつくることではなく、軸になるのは1次産業だ」と強調する。ササミ、砂肝、トサカまで、一切れずつ靖一さんが客の前で焼いて提供する「土佐ジロー」が、全国からリピーターを呼び込む。

 古里で暮らし続けていける産業をつくろうと飼養を始めて31年目、一緒にやりたいと圭子さんが言ってくれたことで「頑張ってきたことが報われた」と靖一さんは笑う。圭子さんは「楽しく暮らせる可能性がある。やれるところまでやっていきたい」。夫妻の二人三脚は続いていく。 
 

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